親が亡くなり、実家や土地を相続することになったものの、

  • 「不動産の名義は、いつまでに変更すればよいのか」
  • 「相続登記には何を持っていけばよいのか」
  • 「兄弟のうち、誰の名義にすればよいのか」
  • 「将来売却するなら、先に何を確認すべきか」

と迷っていませんか。

最初に結論をお伝えすると、不動産を相続したことを知った日から3年以内に、相続登記を申請しないと、10万円以下の過料の対象になります。

ただし、急いで名義だけを変更すればよいわけではありません。
あなたが相続登記をする前には、次の点を家族で確認する必要があります。

  • 誰が不動産を相続するのか
  • 相続後に住むのか、貸すのか、売るのか
  • 維持費や固定資産税を誰が負担するのか
  • 他の相続人との公平性をどのように保つのか
  • 売却時に利用できる税制上の特例があるのか

この記事では、相続による所有権移転の期限、必要書類、手続きの流れ、相続登記をしない場合の問題、売却前に確認すべき税制まで、あなたが次に取るべき行動が分かるように解説します。

相続による所有権移転登記(相続登記)とは何か

あなたの親や配偶者が亡くなり、その方の名義になっている土地や建物を受け継いだとき、法務局の登記簿上の名義を「亡くなった方」から「あなた(相続人)」へ書き換える手続きが「相続登記」です。正式には「相続を原因とする所有権移転登記」と呼びます。

不動産の名義変更というと売買や贈与のイメージが強いかもしれませんが、相続の場合は「相続」という原因によって所有権が移転する点が特徴です。銀行預金の名義変更とは異なり、不動産は登記簿という公的な記録があるため、この記録を正しく書き換えないと、あなたが正式な所有者であることを第三者に証明できません。

相続登記のルートは、大きく2つに分かれます。

  1. 遺産分割協議で相続人が確定するパターン
  2. 家庭裁判所の調停・審判によって相続人が確定するパターン

どちらのパターンかによって、法務局に提出する書類が変わります。手続きの際は司法書士に相談しましょう。

相続による所有権移転登記の流れ

あなたが不動産を相続した場合は、次の順番で進めます。

  1. 遺言書があるか確認する

    最初に、亡くなった方が遺言書を残していないか確認します。
    遺言書がある場合は、原則として遺言書の内容をもとに不動産の名義変更を進めます。
    自宅で見つかった自筆証書遺言は、法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用している場合を除き、家庭裁判所での検認が必要になることがあります。
    遺言書を見つけても、勝手に開封したり、内容を書き換えたりしてはいけません。

  2. 相続人を確定する

    次に、誰が相続人になるのかを戸籍で確認します。
    家族が把握している親族関係と、法律上の相続人が必ず一致するとは限りません。
    前婚の子、認知された子、養子、すでに亡くなっている子の代襲相続人などがいる場合もあります。
    被相続人の出生から死亡までの戸籍を集め、相続人を漏れなく確認してください。

  3. 不動産の内容を確認する

    固定資産税の納税通知書や名寄帳、登記事項証明書を確認し、亡くなった方が所有していた土地・建物を調査します。
    特に、次のような不動産を見落とさないようにしてください。

    • 自宅の土地と建物
    • 私道の共有持分
    • 離れや物置などの建物
    • 遠方の山林や農地
    • 貸宅地や借地権
    • マンションの敷地権
    • 共有名義になっている不動産

    固定資産税が課税されていない土地や私道持分は、納税通知書に分かりやすく記載されていないことがあります。

  4. 不動産の価値と問題点を調べる

    遺産分割協議をする前に、不動産の価格だけでなく、利用上の問題も確認します。
    確認する主な項目は次のとおりです。

    • 現在の市場価格
    • 相続税評価額
    • 固定資産税評価額
    • 毎年の固定資産税や管理費
    • 建物の老朽化や修繕費
    • 境界や越境の問題
    • 借地権・底地などの権利関係
    • 賃貸借契約の有無
    • 売却のしやすさ
    • 再建築や建替えができるか

    「評価額が高いから価値のある不動産」とは限りません。
    売却できない土地や、多額の維持費がかかる建物を相続すると、現金を受け取った相続人との間で不公平が生じることがあります。

  5. 誰が不動産を相続するか話し合う

    遺言書がない場合は、相続人全員で遺産分割協議を行います。
    このとき、単に「長男だから実家を相続する」という決め方をするのではなく、相続後の利用方法まで考えてください。
    たとえば、次のような点を確認します。

    • 誰かが住み続ける予定があるか
    • 空き家になる可能性があるか
    • 賃貸経営を続けられるか
    • 売却する場合、誰が手続きを担当するか
    • 固定資産税や修繕費を負担できるか
    • 他の相続人に代償金を支払えるか

    不動産を相続する人が決まったら、対象不動産を正確に記載した遺産分割協議書を作成し、相続人全員が実印を押印します。

  6. 必要書類を集める

    相続登記に必要な書類は、遺言、遺産分割協議、法定相続分による登記など、相続の方法によって異なります。

  7. 法務局へ登記を申請する

    相続登記は、不動産の所在地を管轄する法務局へ申請します。
    窓口への持参だけでなく、郵送やオンラインで申請できる場合もあります。
    ご自身で申請も可能ですが、基本的には司法書士に代理申請をすることを検討してください。

相続登記で必要な書類

遺産分割協議によって一人または複数の相続人が不動産を取得する場合は、一般的に次の書類が必要です。

  1. 被相続人に関する書類
    ・出生から死亡までの連続した戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍
    ・住民票の除票または戸籍の附票
    ・登記簿上の住所と死亡時の住所のつながりを証明する書類
  2. 相続人に関する書類
    相続人全員の現在の戸籍謄本
    不動産を取得する相続人の住民票
    相続人全員の印鑑証明書
    本人確認書類
  3. 不動産と遺産分割に関する書類
    遺産分割協議書
    登記事項証明書
    固定資産税課税明細書または固定資産評価証明書
    相続関係説明図
    登記申請書
    委任状
    登録免許税分の収入印紙

法務局は、相続登記の申請に際して、被相続人の出生から死亡までの戸籍などを必要書類として案内しています。必要書類は相続内容によって変わるため、管轄法務局または司法書士に事前確認してください。

*参照:法務局「相続手続きハンドブック」

遺言書に基づいて登記する場合は、遺産分割協議書や相続人全員の印鑑証明書が不要になることがあります。
一方で、遺言書の種類によっては、家庭裁判所の検認済証明書などが必要です。

法定相続情報一覧図を利用すると手続きがしやすくなる

相続登記だけでなく、預金口座の解約や相続税申告など、複数の相続手続きを行う場合は「法定相続情報証明制度」の利用を検討してください。
法務局に戸籍一式と法定相続情報一覧図を提出すると、認証された一覧図の写しが無料で交付されます。戸籍一式の代わりとして利用できる手続きが多いため、複数の金融機関で手続きをする場合に便利です。
*参照:法務局「法定相続情報証明制度の具体的な手続きについて」

相続登記にかかる費用

相続登記では、主に次の費用がかかります。

  • 戸籍謄本や住民票などの取得費用
  • 登記事項証明書や固定資産評価証明書の取得費用
  • 登録免許税
  • 司法書士へ依頼する場合の報酬
  • 土地を分筆する場合の測量費用

相続による所有権移転登記の登録免許税は、原則として次の式で計算します。

固定資産税評価額×0.4%

固定資産税評価額×0.4%たとえば、固定資産税評価額が2,000万円であれば、単純計算による登録免許税は8万円です。

相続人同士で話がまとまらない場合

相続人同士の話し合いがまとまらず、3年以内に通常の相続登記ができない場合には、「相続人申告登記」という制度があります。
相続人申告登記は、自分が登記名義人の相続人であることを法務局へ申し出ることで、申出をした相続人について相続登記の申請義務を果たしたものと扱う制度です。
ただし、相続人申告登記をしても、最終的な所有者や持分が確定するわけではありません。相続人申告登記だけでは、不動産の売却や抵当権の設定はできず、遺産分割が成立した後には、改めて正式な相続登記が必要です。
申告登記は、遺産分割を先延ばしにするための制度ではなく、期限が迫っている場合の一時的な対応として考えてください。

相続は土地と現金のどちらが得?

土地と現金のどちらが得かは、一律には決められません。
あなたが確認すべきなのは、相続時の評価額だけではなく、相続後に実際に残る価値です。

注意が必要なのは、不動産は相続税上の評価額と市場での取引される価格(時価)は全く違います。
土地の査定額が1億円だから2人で分筆(土地を切り分ける)すれば5千万(1/2の土地)になるという事ではないです。分筆の仕方一つで市場での評価は大きく変わってきます。

  • 現金を相続するメリット
    1:相続人同士で分けやすい
    2:すぐに生活費や納税資金に使える
    3:固定資産税や修繕費がかからない
    4:売却手続きが必要ない

一方で、現金は使えば減り、物価上昇によって実質的な価値が下がる可能性があります。

  • 土地を相続するメリット
    1:賃料収入を得られる可能性がある
    2:自宅や事業用地として利用できる
    3:将来売却して現金化できる可能性がある

一方で、固定資産税、管理費、修繕費、解体費、測量費などがかかります。

売りたいときにすぐ売れるとは限らず、借地権、境界、接道、共有などの問題を抱えている土地もあります。
したがって、単純に「土地の査定額2,000万円」と「預金2,000万円」を同じ価値として比べることはできません。
不動産については、次の計算で考えるのも参考になります。

現在の売却可能価格-売却費用-税金-将来の維持費-問題を解決するための費用

現金とのバランスを考えたうえで、実質的な価値も考えてみてください。

相続登記をする前に「不動産をどうするか」を考える

相続登記は、法務局へ書類を提出するだけの手続きではありません。
誰の名義にするかによって、その後の売却、賃貸、建替え、管理、納税の方法が変わります。

特に、次のような場合は、登記の前に不動産の専門家へ相談することをおすすめします。

  • 相続人が複数いる
  • 誰も実家に住む予定がない
  • 不動産を売るか残すか決まっていない
  • 兄弟で共有する案が出ている
  • 借地権や底地が含まれている
  • 賃貸物件や自社ビルを相続する
  • 土地の一部を分けて相続したい
  • 境界や越境の問題がある
  • 相続税を支払うために売却する可能性がある
  • 相続人間の公平性を保ちたい

司法書士は登記、税理士は税務、土地家屋調査士は測量や分筆を担当します。
しかし、その前に必要なのは、あなたの家族が不動産を今後どのように引き継ぐかという全体設計です。

不動産の権利関係や相続人が複雑な場合などは、不動産コンサルタントにご相談ください。

よくある質問

Q
不動産を相続したときの「所有権移転日」はいつになる?
A

原則は、所有権は「相続開始日(死亡日)」に移転します。
民法上、相続による所有権の移転は、被相続人が亡くなった日(相続開始日)に発生します。登記手続きが完了した日ではありません。登記は「すでに移転している権利を、第三者に対抗できる状態にするための手続き」であり、権利変動そのものを発生させる手続きではないためです。

Q
相続登記をしないとどうなる?放置するリスクは何ですか?
A

登記自体は罰則規定は無かった地代もありますが、下記のようなリスクをイメージしておくとよいでしょう。
1:10万円以下の過料対象になる(2024年4月以降、正当な理由なく期限を守らない場合)
2:不動産を売却出来ない。
買主に所有権を移す場合には、まず自分名義に所有権移転していることが前提です。名義が先代・先々代のままでは買主への手続きが進められない。
3:担保に入れられない。
住宅ローンの借り換えや不動産を担保とした融資に現在の名義人が申請者本人であることが必要です。
4:相続人がさらに増える(数次相続)
登記を後回しにしている間に他の相続人が亡くなると、その方の相続人(配偶者や子供)が新たに権利者に代わり、話し合う相手がどんどんと増えていく。
5:共有者全員の同意が得られず、実質的に「塩づけ」の不動産になる
これは不動産業界のわたしたちの現場で最も多く目にするトラブルのパターンです。

Q
相続で不動産の一部を移転することが出来ますか?
A

答えは「可能」です。 例えば「兄弟で50%ずつ共有名義にする」といった移転はできます。しかし、不動産のプロの視点からは「共有名義は避けるべき」と強くお伝えします。将来、不動産を売却したり建て替えたりする際に、共有者全員の同意が必要になり、意見の対立からトラブルに発展するケースが非常に多いからです。不動産は極力「単独所有」にすることをおすすめします。

Q
相続した土地を3年以内に売却すると3,000万円控除を受けられますか?
A

答えは「条件を満たせば受けられます」。
亡くなった親が一人暮らしをしていた実家(一戸建て)をあなたが相続し、一定の耐震基準を満たすか、あるいは家屋を取り壊して更地にした上で売却した場合、「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」が適用されます。
これにより、不動産を売却して得た利益(譲渡所得)から最大3,000万円を差し引くことができ、税金を大幅に圧縮できます。
ただし、この特例を受けるには「相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日まで」に売却を完了させるという厳格な期限があります。「とりあえず放置」していると、この大きな節税メリットを逃してしまうため、所有権移転の手続きと並行して、早めに売却活動の準備を進める必要があります。
*参照:国税庁「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」

まとめ|相続登記は名義変更ではなく、家族の将来を決める手続き

相続による所有権移転登記について、重要な点をまとめます。

  • 相続による不動産の所有権移転日は、原則として被相続人が亡くなった日
  • 相続登記は2024年4月1日から義務化されている
  • 不動産を相続したことを知った日から3年以内に申請する
  • 2024年4月1日より前の未登記相続も原則として2027年3月31日が期限
  • 正当な理由なく申請しない場合は10万円以下の過料の可能性がある
  • 登記をしなければ、原則として相続不動産を売却できない
  • 共有名義にする前に、将来の売却や管理まで考える
  • 相続した不動産を売却する場合は、税制上の特例を契約前に確認する

あなたが最初に決めるべきことは、登記申請書の書き方ではありません。

誰が不動産を引き継ぎ、その不動産を今後どのように使うのかを家族で整理することです。

株式会社ユー不動産コンサルタントでは、相続登記そのものではなく、登記前の不動産の分け方、売却・保有・賃貸の比較、借地権や共有不動産の整理などを支援しています。
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