耐震基準適合証明書取得の流れ
耐震基準適合証明書を取得するにはどうしたらいい?
実際の流れはどうなってるの?
築古物件でも耐震基準適合証明書取得で住宅ローン控除を受けられるって本当!?
こんにちは。
台東区上野で不動産問題解決コンサルティング仲介の
株式会社ユー不動産コンサルタント脇保雄麻です。
今回は、「耐震基準適合証明書」についてです。
住宅ローン控除については、下記で記載しましたのでご確認ください。
住宅ローン減税には築後年数要件が定められています。非耐火住宅(木造住宅等)は20年以内、耐火住宅(マンションなど)は25年以内と定められています。
税制改正で耐震基準適合証明書があれば築後年数要件を緩和するという特例が定められました。
耐震性が確認された住宅の取得であれば、築年数の要件の定めに関わらず住宅ローン減税を利用できるようになるという事です。
そこで適合証明書について記載しました。
制度上の問題点は?
耐震基準適合証明書の取得により住宅ローン控除を利用できるようになる。
この制度には問題がありました。
昭和56年6月以降の所謂「新耐震」と呼ばれる時期の住宅でも、耐震診断を実施すると現行基準を満たさず、耐震改修が必要であると判定される確率が高いからです。
耐震診断は非破壊検査なので、所有権移転までに耐震診断を実施することは、売主にとってそれほど負担ではないのですが、工事となると話は別です。
所有権移転前に買主が希望するリフォームを実施することは、様々なトラブルの原因となるのであまり一般的ではありません。
※外からの工事であればまだ良いのですが、耐震改修は室内の工事となりますので現実的ではありません。
上記のような実情を踏まえて、所有権移転後に耐震改修工事を実施して耐震基準適合証明書を取得する場合であれば、住宅ローン減税を適用させましょう、という特例が設けられました。
耐震基準適合証明書は耐震診断の結果、基準を満たすことを証明する書類なので、所有権移転前の取得の場合、所有者は売主となるので、申請者が売主となり、所有権移転後の場合は所有者が買主のため、申請者が買主となる訳です。
書類の記載ルールについては概ねこの理解で問題ないと思います。
ただ、誰が頼むべきなのか?については、書類上の記載とは別の問題なので誤解が生じやすいと思います。
誰が申請する?
耐震基準適合証明書は誰が依頼するべきなのか?
もう少し具体的に言うと耐震基準適合証明書にかかる諸費用を誰が負担するべきなのか?
については、誰でも良いが適切な回答だと思います。
発生するメリットを考えると買主が費用負担すべきと思われますが、耐震性が確保された住宅であることが不動産取引の条件の場合は、その証明の手段として売主が負担するべき状況も考えられます。
極論ですが、取引を円滑に進めるために仲介会社が負担するという考え方も間違いではありません。
(実際フラット35適合証明は仲介会社が申請者になることができます)
大切なのは、何の目的で利用する書類で、誰が費用負担するのか、万が一発行されなかった場合はどうするのかなどを売主・買主で明確にすることだと思います。
耐震基準適合証明書発行の実務
耐震基準適合証明書発行の実務について説明します。
(耐震基準適合証明書は建築士事務所に所属する建築士以外でも発行する方法がありますが、ここでは建築士が発行する前提で説明します。)
まず、耐震基準適合証明書は建築士が申請者に対して発行する書類です。
従って申請者欄はありますが申請者欄には捺印欄がありません。捺印欄は建築士情報を記載する場所にあります。
それでは発行する建築士の立場で考えてみます。
耐震基準適合証明書は建築士が発行する書類なので、依頼文書ではありません。
耐震基準適合証明書発行業務を請け負う上で、誰でも良いのですが、依頼者から文書で依頼を受ける必要があります。
(口頭で済ませる方もいますが、トラブルを避けるには文書化した方が良いです)
耐震基準適合証明書発行依頼の流れ
1)依頼者から文書で依頼を受ける(費用や諸問題について合意する)
2)耐震診断を実施する
3)基準を満たすと判定された場合、建築士が耐震基準適合証明書を申請者(現所有者)へ発行する。
改修工事が必要な場合
耐震基準適合証明書の発行が所有権移転後になる場合は、耐震基準適合証明書仮申請書という書類が必要になります。
この耐震基準適合証明書仮申請書は住宅取得予定者が建築士に対して発行する書類で、建築士はその書類に受領したという意図で捺印します。
流れは概ね以下になります。
1)依頼者が建築士に対して書面で業務を依頼します。(費用や諸問題について合意する)
2)住宅取得予定者が建築士に対して耐震基準適合証明書仮申請書を発行します。
3)建築士は耐震基準適合証明書仮申請書へ捺印し住宅取得予定者へ耐震基準適合証明書仮申請書を戻します。
4)任意のタイミングで耐震診断を実施します。(耐震診断は仮申請の前でも後でも問題ありません)
5)所有権移転後に耐震改修工事を実施します。
※住宅ローン減税には築後年数要件の他に、所有後半年以内に居住するという要件があるため、半年以内に工事を終え証明書を取得し住民票を移す必要があります。
6)建築士が耐震基準適合証明書を発行します。
※余談ですが、所有権移転後の耐震基準適合証明書発行が別の建築士になった場合、所有権移転前に作成した仮申請書は無効となり、この場合買主は住宅ローン減税が使えなくなる可能性が高いと思います。
よくあるトラブル事例
[su_accordion][su_spoiler title=”1:既に所有権移転してしまったが、今から工事を行えば間に合いますか?” open=”no” style=”default” icon=”plus” anchor=”” class=””]所有権移転前に仮申請を行っていないのでNGです。
所有権移転後の場合、「所有権移転後居住開始までに耐震改修工事を実施して耐震基準適合証明書を取得する」というのが要件なので、既に住民票を移していた場合は2重の意味でNGです。
住宅ローン減税の手続きは所有権移転までに実施しなければならないことがあります。[/su_spoiler]
[su_spoiler title=”2:マンションだが所有権移転後の手続きで良いか?” open=”no” style=”default” icon=”plus” anchor=”” class=””]所有権移転間際もしくは所有権移転後に問い合わせがあるパターンが多いです。
結論はNGです。
所有権移転後の場合は、耐震改修工事を行うことが要件です。マンションは戸単位で耐震改修工事が実施できないので、制度対象外となります。[/su_spoiler]
[su_spoiler title=”3:リフォームは別の業者で考えているが、耐震基準適合証明書だけ依頼できるか?(戸建ての場合)” open=”no” style=”default” icon=”plus” anchor=”” class=””]難しい質問ですがほぼNGです。(少なくとも弊社ではお断りしています)
耐震診断だけで基準を満たしている可能性が低く、また、リフォームの内容によっては構造部分に影響を及ぼすことも懸念されるため、普通の建築士であれば引き受けないと思います。
それだけ耐震基準適合証明書に印鑑を押すというのは重たい業務なのです。
既にリフォーム会社が決まっている場合は、そのリフォーム会社に耐震基準適合証明書を依頼するのが筋です。
また、中古住宅を購入する際のリフォームは耐震基準適合証明書が発行できる、建築士が在籍している会社を選ばないと、住宅ローン減税だけでなく、各種住宅取得支援制度が利用できなくなってしまいます。[/su_spoiler]
[su_spoiler title=”4:気リフォームは別の業者で考えているが、耐震改修工事だけ分離発注できないか?(戸建ての場合)” open=”no” style=”default” icon=”plus” anchor=”” class=””]こちらも難しい質問ですがほぼNGです。(少なくとも弊社ではお断りしています)
施工責任の区分が曖昧になるため、1回の工事で複数の事業者が元請となる契約は推奨できません。
3と同じで、リフォームを頼みたい事業者が耐震基準適合証明書を手配するべきで、耐震基準適合証明書すら手配できないリフォーム会社を選ぶべきではありません。[/su_spoiler]
[su_spoiler title=”5:所有権移転後に耐震診断を実施したら基準に適合していて耐震改修が不要と判断された。制度の対象となりますか?(戸建て)” open=”no” style=”default” icon=”plus” anchor=”” class=””]所有権移転後は耐震改修工事を実施することが前提です。そもそも基準を満たす(工事が不要)のであれば、所有権移転前に手続きが可能だからです。
築20年といっても、新しいものは阪神淡路大震災後の物件も出てきます。また、2×4工法の場合はきちんと施工されたものであれば基準を満たす可能性が高いです。
住宅ローン減税を利用したい場合は、少なくとも耐震診断くらいは早めに実施しておいた方が良いと思います。[/su_spoiler]
[su_spoiler title=”何とかなりませんか?” open=”no” style=”default” icon=”plus” anchor=”” class=””]なりません(笑)。変なゴネ方をする不動産仲介会社がたまにいますが、日付を遡って書類を作成する行為は違法です。[/su_spoiler][/su_accordion]
まとめ
まとめると、耐震基準適合証明書・仮申請書だけで済ませるのではなく、建築士に耐震診断などを含む耐震基準適合証明書発行に至るまでの業務を発注する書類が必要になります。
単に書類作成だけでなく、証明書発行までの条件を関係者が合意して業務を進めることがトラブル回避の第一歩です。
例えば、当初A建築士に耐震基準適合証明書を発行してもらおうと依頼したが、コストの面からA建築士が指定する事業者ではないリフォーム会社に改修工事を依頼することになったとします。
このリフォーム会社にはB建築士が所属していて、B建築士でも耐震基準適合証明書を発行することができますが、仮申請と耐震基準適合証明書の建築士が異なることからルールに適していないと判断させる可能性が高い、ということです。
※仮申請書を読むと、その建築士が証明書を発行する前提としか読み取れませんね。
耐震改修工事費用は耐震診断をしてみないとわからないので、複数の事業者で相見積りをしたい場合は、複数の事業者に耐震診断を依頼する必要があります。(別の病院のカルテで手術する医者がいないのと同じ考え方です)
中古住宅取得時のリフォームと通常のリフォームを一緒にしてはいけません。耐震改修が必要な物件を購入する時は、なるべく不動産売買契約までに耐震診断を実施して正確な改修費用を把握しておいた方が良いです。
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