借地権を相続しても、承諾料の支払いは「原則不要」です
あなたが親から借地権付きの建物を相続した場合、まず気になるのは「地主に名義変更料や承諾料を払う必要があるのか」という点ではないでしょうか。
結論からお伝えすると、相続によって借地権を引き継ぐ場合、地主の承諾は原則不要です。名義変更の承諾料も、原則として支払う必要はありません。
ただし、手続きを放置すると後で大きなトラブルになる可能性があります。また、「相続」と「生前贈与」では扱いがまったく異なります。この記事では、あなたが実際に動けるよう、必要な情報を順番に整理してお伝えします。
借地権を相続したら、まず何をすればいいのか?
借地権を相続したら、あなたが最初にやるべきことは次の5つです。
- 借地契約書を確認する
- 借地上の建物名義を確認する
- 相続人同士で、誰が借地権を引き継ぐか決める
- 借地上建物の相続登記を行う
- 地主へ相続が発生したことを連絡する
この順番を間違えないことが大切です。
地主に連絡すること自体は大切ですが、相続人同士で何も決まっていない段階で「名義変更をお願いします」と伝えてしまうと、話が複雑になることがあります。
まずは、あなたの家族側で借地権をどう引き継ぐのかを整理しましょう。
1.借地契約書を確認する
まず、故人が地主と締結していた土地賃貸借契約書を探してください。
借地契約書が見つかったら、次の内容を確認します。
- 地代の金額
- 地代の支払い先
- 地代の支払い方法
- 契約期間
- 契約の満了日
- 更新料の有無
- 建替えや増改築の取り決め
- 譲渡や転貸に関する取り決め
- 借地の種類が旧借地法なのか、借地借家法なのか
特に重要なのは、地代の支払い状況です。
相続手続き中であっても、借地契約は続いています。
そのため、遺産分割協議が終わっていないからといって、地代の支払いを止めてよいわけではありません。
地代を滞納すると、地主との信頼関係が悪くなります。
滞納が長く続けば、契約解除のリスクも生じます。
誰が借地権を相続するか決まるまでの間は、相続人の代表者が一時的に地代を支払う、または相続人全員で負担方法を決めるなど、早めに対応してください。
借地契約書が見つからない場合でも、借地権がなくなるわけではありません。
地代の領収書、振込記録、固定資産税の課税明細、建物登記簿、地主との過去のやり取りなどが、借地関係を確認する資料になります。
契約書がない場合ほど、相続後に地主と書面で確認しておくことが大切です。
2.借地上の建物名義を確認する
次に、借地上に建っている建物の名義を確認してください。
借地権は、土地を借りる権利です。
ただし、借地権を主張するうえで重要になるのは、その土地の上にある建物の名義です。
確認する資料は、建物の登記事項証明書です。
建物所在地でなくてもお近くの法務局で取得も建物の登記事項証明書を取得できます。
*参照:法務局・地方法務局所在地一覧
建物の登記事項証明書を取得するには「家屋番号」が分からないと取得できません。
家屋番号は、登記識別情報(権利書)または毎年贈られてくる納税通知書に記載があります。それでも分からない場合は、法務局で土地上の地番から建物名義人の登記事項証明書を調べてもらえたりします。
建物登記を確認すると、次のことが分かります。
- 建物の所有者が誰になっているか
- 建物が亡くなった方の名義になっているか
- 共有名義になっていないか
- 建物が未登記ではないか
- 抵当権などの権利が付いていないか
たとえば、親が借地契約者であっても、建物名義が別の家族になっていることがあります。
また、古い建物では、登記上の所有者が祖父母のままになっていることもあります。
この状態を放置すると、相続人が誰なのか、誰が借地権を引き継ぐのかが分かりにくくなります。
借地権の相続では、「借地契約の名義」と「建物の登記名義」が必ずしも一致しているとは限りません。
そのため、契約書だけで判断せず、建物登記も必ず確認してください。
もし建物が未登記の場合は、相続後の整理が複雑になることがあります。
将来、売却や建替えを考える場合には、建物の登記や権利関係の整理が必要になる可能性があります。
3.相続人同士で、誰が借地権を引き継ぐか決める
借地契約と建物名義を確認したら、相続人同士で誰が借地権を引き継ぐのかを決めます。
借地権は、相続財産の一つです。
そのため、相続人全員で遺産分割協議を行い、誰が借地上の建物と借地権を取得するのかを決める必要があります。
ここで大切なのは、「とりあえず兄弟で共有」にしないことです。
借地権は、現金のように簡単に分けられる財産ではありません。
共有にすると、将来次のような問題が起きやすくなります。
- 誰が住むのか決まらない
- 誰が地代を支払うのか揉める
- 売却したい人と残したい人で意見が分かれる
- 建替えや修繕の判断が進まない
- 地主との交渉窓口が複数になる
- 次の相続で甥や姪まで関係者が増える
借地権は、地主との関係が続く不動産です。
そのため、できるだけ管理や判断をする人を一本化した方が、後のトラブルを避けやすくなります。
たとえば、長男が借地上の建物に住み続けるのであれば、長男が借地権付き建物を取得し、他の相続人には預貯金や代償金で調整する方法があります。
反対に、誰も住まないのであれば、売却や地主への返還も含めて検討する必要があります。
大切なのは、相続人全員が「法律上の取り分」だけでなく、「今後その不動産を誰が責任を持って管理するのか」まで話し合うことです。
4.借地上建物の相続登記を行う
誰が借地権付き建物を取得するか決まったら、借地上建物の相続登記を行います。
相続登記とは、亡くなった方の名義になっている建物を、相続した人の名義に変更する手続きです。
借地権そのものが土地に登記されていない場合でも、借地上の建物を相続人名義にすることで、借地権を引き継いだ人が明確になります。
相続登記を行うためには、一般的に次の書類が必要になります。
- 被相続人の戸籍関係書類
- 相続人の戸籍関係書類
- 遺産分割協議書
- 相続人の印鑑証明書
- 建物の固定資産評価証明書
- 相続する人の住民票
遺言書がある場合は、遺言書に基づいて手続きを進めることもあります。
注意点として、不動産の相続登記は義務化されています。
相続によって建物を取得したことを知った日から、原則として3年以内に相続登記を申請する必要があります。
相続登記を放置すると、将来、売却や建替えをしたいときに手続きが進まなくなります。
また、次の相続が発生すると、関係者が増えて、遺産分割協議がさらに難しくなります。
借地権付き建物の場合、建物名義の整理は地主との関係にも影響します。
誰が新しい借地人なのかを明確にするためにも、相続登記は早めに行ってください。
5.地主へ相続が発生したことを連絡する
相続人同士で誰が借地権を引き継ぐか決まり、建物の相続登記の準備が整ったら、地主へ相続が発生したことを連絡します。
相続による借地権の承継では、地主の承諾は原則不要です。
そのため、名義変更の承諾料も原則として支払う必要はありません。
しかし、地主に何も伝えなくてよいわけではありません。
借地関係は、相続後も続きます。
地代の支払い、契約更新、建替え、増改築、将来の売却など、地主との調整が必要になる場面があります。
そのため、地主には次の内容を伝えておくと安心です。
- 借地人が亡くなったこと
- 相続人が誰であるか
- 誰が借地権付き建物を引き継ぐのか
- 今後の地代を誰が支払うのか
- 連絡窓口を誰にするのか
- 建物の相続登記を行う予定または完了したこと
地主への連絡は、口頭だけで済ませず、できれば書面で残しておくことをおすすめします。
特に、古い借地契約では、契約書が残っていないこともあります。
その場合は、相続をきっかけに「相続による借地人変更の確認書」を取り交わしておくと、将来のトラブルを防ぎやすくなります。
ここで注意してほしいのは、地主への連絡を急ぎすぎないことです。
相続人同士で誰が引き継ぐか決まっていない段階で地主へ連絡すると、地主側も誰と話をすればよいのか分からなくなります。
まず家族側で方針を整理し、そのうえで地主へ丁寧に報告する流れが望ましいです。
借地権の相続では、法律上の手続きだけでなく、地主との関係を壊さない実務対応が大切です。
なぜ相続に承諾料が不要なのか
借地権を第三者に「譲渡」する場合は、民法第612条により地主の承諾が必要で、その際に承諾料(名義変更料)を求められるのが一般的です。
しかし、「相続」は法的に「譲渡」とは別の扱いになります。相続とは、亡くなった方(被相続人)の権利と義務を相続人が包括的に引き継ぐものです。あなたが自分の意思で借地権を「譲り受けた」わけではないため、承諾を求める根拠がそもそも存在しません。
・相続 → 地主の承諾なし・承諾料なし(法律上)
・売買・生前贈与・遺贈(法定相続人以外への遺言による譲渡) → 地主の承諾あり・承諾料あり
地主から承諾料を請求された場合でも、相続を理由とするものであれば断ることができます。ただし、今後も長く続く地主との関係を考え、感情的に対立するのではなく、専門家(司法書士・弁護士)に相談しながら冷静に対処することをおすすめします。
よくある質問
- Q借地権は兄弟で相続できますか?
- A
可能ですが、将来のトラブルを避けるためには、遺産分割協議で「誰が単独で相続するか」を決め、1人の名義にまとめておくことが現実的です。
法律上は、あなたと兄弟で借地権を共有名義にして相続することは可能です。しかし、もし将来あなたが「借地権を第三者に売却したい」と考えたとき、共有者である兄弟全員の同意が必要になります。
もし1人でも反対すれば売却できず、使わない土地の地代だけを全員で払い続ける「負動産」になってしまいます。そのため、借地権を相続する際は、必ず「あなた単独」または「兄弟の誰か1人の単独名義」にしてください。
- Q地主が亡くなった場合、借地権はどうなりますか?
- A
地主が亡くなった場合、地主の相続人が「新しい地主」として権利を引き継ぎます。あなたが結んでいる借地契約はそのまま有効ですので、新しい地主に対して今まで通り地代を支払い続ければ問題ありません。あなたが地主に更新料や承諾料を改めて支払う必要もありません。
- Q借地権を生前贈与できますか?
- A
できますが、相続と違い「地主の承諾」と「承諾料の支払い」が必要です。
親が亡くなった後の「相続」では承諾料が不要でしたが、親が生きているうちにあなたへ借地権を「生前贈与」する場合は扱いが異なります。生前贈与は、法律上「第三者への譲渡」とみなされるため、地主の許可が必要になります。
一般的に、この場合は借地権価格の約10%程度の「譲渡承諾料」を地主に支払わなければなりません。生前贈与を受ける場合は、多額の出費を伴うため資金計画に注意してください。
まとめ:借地権の相続は早めの対策を
この記事でお伝えしたい重要なメッセージは、「あなたが借地権を相続した場合、名義変更の承諾料は不要だが、必ず単独名義で引き継ぐべき」ということです。
相続発生時に遺産分割協議ですぐに話がまとまれば良いですが、現実には話し合いが難航することも少なくありません。共有名義のまま放置してしまうと、後から地主との交渉や売却が必要になった際、あなた自身が身動きを取れなくなってしまいます。
借地権の相続が発生した、あるいは今後発生しそうな場合は、なるべく早くご親族で話し合い、単独名義での相続を決めて地主と合意書を交わしましょう。
もし「兄弟間で話がまとまらない」「地主との交渉に不安がある」という場合は、相続が発生する前の段階から、不動産と相続の専門家(株式会社ユー不動産コンサルタントなど)へ相談し、資産の組み換え等の対策を立てておくことを強くおすすめします。
