借地権は、契約期間が満了したからといって、当然に土地を明け渡さなければならない権利ではありません。
借地借家法では、借地人が更新を請求した場合や、期間満了後も土地の使用を継続している場合、建物があることを前提に、原則として従前と同じ条件で契約が更新されたものと扱われます。地主が更新を拒否するには、遅滞なく異議を述べるだけでなく、法律上の「正当事由」が必要です。
【借地権更新で知っておくべき5つのポイント】
1:更新料の支払いは法律上の義務ではないが、過去に支払ってきた慣行がある場合には支払い義務の発生がある。
2:更新料の相場は「更地価格×借地権割合×おおむね5%前後」が目安であるが地域等によって異なる。
3:借地人が土地を使い続けたい限り、地主は「正当事由」がなければ更新を拒否できません。
4:旧法借地権は、更新後も旧借地法が適用され続けます。
5:期間満了時に更新しない場合は、原則として建物を解体して土地を更地で返還する義務(更地返還義務)がありますが、要件を満たせば「建物買取請求権」で地主に建物を買い取ってもらえる可能性があります。
この記事では、あなたが借地権の更新について必要なすべての知識を1ページにまとめました。
借地権が更新される3つのパターン
借地権の更新手続きには、大きく分けて3つのパターンが存在します。あなたが今どの状況にいるのか、あるいは今後どの状況になり得るのかを把握しておきましょう。
合意更新|地主と借地人が条件を決めて更新する方法
あなた(借地人)と地主が、契約期間満了のタイミングで話し合い、更新後の契約期間・地代・更新料・その他条件を合意したうえで更新する方法です。トラブルも最も少なくお互いが納得した上で新たな契約を結ぶ実務上で最も望ましいのが合意更新です。
この際、更新料の支払いや次回の契約期間などを書面にまとめ、新たに「借地権更新契約書」を取り交わすのが一般的です。
更新時には契約内容を確認しなおし、更新契約書を取り交わしておくことが将来のトラブルを防げることにつながります。
例えば次のような事項を更新契約書に記載しておく
- 契約期間がいつまでなのか
- 更新料の有無と金額
- 地代の金額
- 建替えや増改築の承諾条件
- 譲渡や相続時の扱い
- 借地面積や境界の確認
- 建物名義と借地人名義の一致
- 旧借地法に基づく契約なのか、新法の普通借地権なのか
特に相続で借地権を引き継いだ場合、昔の契約書が古いまま残っていたり、契約期間がすでに過ぎていたり、建物名義が亡くなった方のままになっていることがあります。
そのような状態で形式的に更新だけを済ませると、次の相続や売却のときに問題が表面化します。
更新請求による更新|あなたから更新を求める方法
契約期間が満了した後も、借地に建物が存在している場合、あなたから地主に対して「契約を更新してほしい」と請求する(意思表示をする)方法です。
この請求を行った場合、地主側に「正当事由(地主自身がその土地をどうしても使わなければならない等、法的に認められる強力な理由)」がない限り、これまでの契約と同一の条件で更新されたものとみなされます。
(借地契約の更新請求等)
第五条 借地権の存続期間が満了する場合において、借地権者が契約の更新を請求したときは、建物がある場合に限り、前条の規定によるもののほか、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。ただし、借地権設定者が遅滞なく異議を述べたときは、この限りでない。(借地契約の更新拒絶の要件)
第六条 前条の異議は、借地権設定者及び借地権者(転借地権者を含む。以下この条において同じ。)が土地の使用を必要とする事情のほか、借地に関する従前の経過及び土地の利用状況並びに借地権設定者が土地の明渡しの条件として又は土地の明渡しと引換えに借地権者に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、述べることができない。
借地借家法では、借地権の存続期間が満了する場合、借地人が契約の更新を請求したときは、建物がある場合に限り、原則として従前の契約と同じ条件で更新されたものとみなされます。地主がこれを拒むには、遅滞なく異議を述べる必要があります。
ただし、地主が異議を述べたとしても、それだけで更新を拒否できるわけではありません。地主側に「正当事由」が必要です。
法定更新|明確な合意がなくても法律上更新される方法
話し合いがまとまらなかったり、あなたも地主も何も手続きをしないまま契約期間が満了した場合に適用される、借地人を守るための強力なルールです。
期間満了後もあなたがこれまで通り土地を使い(住み)続けており、地主が遅滞なく異議を唱えなかった場合、法律の力によって自動的に契約が更新されます。 これを法定更新と呼びます。
地主が遅滞なく異議を述べても、その異議に「正当事由」が認められなければ、法定更新が成立します。
契約期間が満了しても土地上に建物があり、借地人が住み続けている以上、借地契約は更新されたものとみなされます。
例えば次のような場合が考えられます。
- 契約期間が満了していたことに後から気づいた
- 地主から更新契約書の提示がないまま地代を払い続けている
- 借地人も地主も特に何も言わず、従来どおり土地を使っている
- 更新料の話がまとまらないまま期間満了を迎えた
このような場合でも、建物が存在し、あなたが土地を使い続けていて、地主に正当事由のある異議がなければ、法定更新が問題になります。
ただし、法定更新になったからといって、何もしなくてよいわけではありません。
法定更新のまま長期間放置すると、将来、借地権を売却したいとき、建替えをしたいとき、相続人同士で分けたいときに、契約内容が不明確になりやすいからです。
更新料の相場と計算方法
更新料には法律で定められた算定基準がないため、最終的には地主と借地人の話し合いで金額が決まります。とはいえ、実務や過去の裁判例・調停例では、目安となる相場が存在します。
【一般的な計算式】
更新料 = 更地価格 × 借地権割合 × 5%程度
- 更地価格
その土地を更地として売買した場合の価格。実勢価格の代わりに、国税庁の「路線価」(路線価×土地の面積)で簡易的に算出するのが一般的です。 - 借地権割合
国税庁が地域ごとに公表している割合(A〜Gの記号、30%〜90%)。路線価図に記載されています。
(計算例)更地価格が3,000万円、借地権割合が60%(D)の土地の場合
借地権価格 = 3,000万円 × 60% = 1,800万円
更新料の目安 = 1,800万円 × 5% = 90万円
*パーセンテージは目安です。
| 基準の取り方 | 目安となる割合 |
| 借地権価格を基準 | 5~10%程度 |
| 更地価格を基準 | 2~5%程度(都市部は高め) |
一般的に、地価の高い都心部ほど更新料の割合は高くなりやすく、地方では相場自体が低い、あるいは支払う慣習がない地域もあります。
不動産適正取引推進機構の相談事例でも、旧借地法に基づく借地契約の更新料について、借地権価格の5%〜10%相当額が比較的標準的な範囲として言及されています。
ただし、これも絶対的な基準ではありません。地域性、地代水準、契約経緯、借地面積、借地権割合、今後の承諾事項の有無によって妥当な金額は変わります。
地主が更新を拒否したらどうなるのか
地主から「契約期間が満了するので更新しない」「土地を返してほしい」と言われた場合でも、それだけで直ちに明渡しが必要になるわけではありません。
結論としては、建物が存在する限り、地主が「正当事由」なしに更新を拒否することはできません。
借地借家法では、地主が借地契約の更新を拒絶するためには、正当事由が必要です。正当事由の判断では、地主と借地人の土地使用の必要性、これまでの経緯、土地の利用状況、立退料などの財産上の給付が総合的に考慮されます。
(借地契約の更新拒絶の要件)
第六条 前条の異議は、借地権設定者及び借地権者(転借地権者を含む。以下この条において同じ。)が土地の使用を必要とする事情のほか、借地に関する従前の経過及び土地の利用状況並びに借地権設定者が土地の明渡しの条件として又は土地の明渡しと引換えに借地権者に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、述べることができない。
正当事由の有無は、次のような要素を総合的に考慮して判断されます。
- 地主・借地人それぞれの土地利用の必要性(自己使用の緊急性など)
- これまでの借地に関する経緯(契約の経緯、地代の支払い状況など)
- 土地の利用状況
- 地主が借地人に対して立退料(財産上の給付)を申し出ているか
このうち「立退料の申し出」は、正当事由を補完する要素として重視される傾向にあります。つまり、地主側が正当事由をある程度整えるために、相応の立退料を提示してくることもあるということです。
実務上、正当事由が認められるハードルは非常に高く、単に「地主が土地を自由に使いたい」という理由だけで更新を拒否できるケースはまれです。そのため、借地人が更新を希望し、建物が存在する限り、多くの場合は法定更新によって契約が継続されます。
借地人は強く保護されていますが、何をしても守られるわけではありません。
次のような事情がある場合は地主側は更新拒否を考慮される可能性もあります。
・長期間の地代滞納がある
・地主に無断で借地権を譲渡した
・地主に無断で大規模な増改築をした
・契約違反が繰り返されている
・建物が存在しない、または建物所有目的が失われている
・定期借地権など、そもそも更新を予定していない契約である
借地権の期間満了後に更新しない場合どうする?
期間満了を迎えたとき、借地人には大きく分けて「地主に土地を明け渡す」か「借地権を第三者へ譲渡する」の2つの選択肢があります。
地主に土地を明け渡す
地代の負担が重い、建て替えの予定がない、相続する人がいないといった事情から、更新せずに手放す選択をする借地人もいます。この場合の原則は次のとおりです。
- 更地返還義務
原則として、借地人は自己負担で建物を解体し、土地を更地にして地主に返還する義務を負います。一般的な木造一戸建てでも、解体費用は100万〜300万円程度かかることが多く、決して小さな負担ではありません。 - 建物買取請求権
借地借家法で認められた借地人の権利で、要件を満たせば、解体せずに地主へ建物を時価で買い取るよう請求することができます。これが認められれば、解体費用の負担なく借地権を手放すことが可能です。
借地権を第三者へ売却する
「更地にして返す」以外に、借地権(借地上の建物ごと)を第三者へ売却するという選択肢もあります。期間満了が近づいたタイミングで、更新料や地代の負担、今後の交渉の手間を考え、更新せずに借地権を手放して現金化する借地人も少なくありません。
ポイントは以下の通り
- 地主の承諾が必要
借地権(借地上の建物)を第三者に譲渡するには、原則として地主の承諾を得る必要があります(民法612条)。無断で譲渡すると契約解除の対象になり得るため、必ず事前に地主へ相談・承諾を取る必要があります。 - 譲渡承諾料(名義変更料)が発生する
地主の承諾を得る対価として、譲渡承諾料(名義書換料)の支払いを求められるのが一般的です。相場は更地価格の10%程度が目安とされていますが、法律で金額が定められているわけではなく、地主との協議や裁判所の借地非訟手続きで決まることもあります。 - 地主が承諾しない場合は借地非訟手続きが利用できる
地主がどうしても譲渡を承諾しない場合でも、借地借家法上の「借地非訟手続き」を利用し、裁判所に代わりの許可(譲渡許可の裁判)を求めることができます。この手続きでは、地主に対して裁判所が定める承諾料相当額の給付を条件に、譲渡が許可される仕組みになっています。 - 地主自身が買い取ってくれるケースもある
借地権を手放したい借地人と、更地として土地を取り戻したい地主の利害が一致すれば、地主自身が借地権(建物)を買い取り、更地返還と同様の状態を実現するという解決に至ることもあります。この場合、更地返還のための解体費用を借地人が負担せずに済み、かつ売却代金を受け取れるというメリットがあります。
借地権を手放したい借地人と、更地として土地を取り戻したい地主の利害が一致すれば、地主自身が借地権(建物)を買い取り、更地返還と同様の状態を実現するという解決に至ることもあります。
この場合、更地返還のための解体費用を借地人が負担せずに済み、かつ売却代金を受け取れ更新のたびに更新料や地代の交渉で負担を感じる、建物の老朽化で建て替えの予定もない、相続する人がいない、といった事情がある場合は、「更地返還」よりも「借地権売却」の方が、金銭的・手続き的に有利になるケースが多くあります。
ただし、借地権の売却には地主との交渉力や専門知識が必要になるため、借地権に詳しい不動産会社へ相談したうえで進めるのが安全です。
定期借地権の場合
定期借地権(一般定期借地権・事業用定期借地権・建物譲渡特約付借地権)の場合は、そもそも更新という制度自体が存在せず、契約期間の満了とともに借地権は消滅し、原則として更地で返還しなければなりません。
ご自身の借地契約が「普通借地権(旧法借地権を含む)」なのか「定期借地権」なのかは、契約書の記載で必ず確認しておく必要があります。
借地権の更新は、将来の出口を考えるタイミングでもあります。
・そのまま住み続けたい
・建替えたい
・子どもに相続させたい
・借地権を売却したい
・地主に買い取ってもらいたい
・底地と借地を整理したい
・家族で共有になる前に整理したい
更新時に何も考えずに契約を延ばすと、次の相続で家族が困ることがあります。
特に借地権は、所有権の土地よりも権利関係が複雑です。
相続人が複数いる場合、誰が借地権を引き継ぐのか、建物をどうするのか、地代を誰が払うのかを早めに整理しておく必要があります。
借地期間満了後、更新しないでいるとどうなる?
借地権の期間満了後の扱いは、状況によって異なります。
- 【建物があり、あなたが土地を使い続けている場合】
この場合は、更新請求または法定更新が問題になります。
建物がある限り、あなたが引き続き土地を使用し、地主が正当事由のある異議を述べていなければ、借地契約は更新されたものとして扱われる可能性があります。 - 【建物がなくなっている場合】
借地権は、建物所有を目的とする権利です。
そのため、建物が滅失している場合や、建物所有目的が失われている場合は、借地権の存続や更新について慎重に判断する必要があります。
特に、建物を解体する予定がある場合、解体前に地主との協議をせずに進めると、借地権の扱いで大きなトラブルになることがあります。
【更新されずに終了する場合】
借地権の存続期間が満了し、契約が更新されない場合、借地人は地主に対して、建物等を時価で買い取るよう請求できる場合があります。これは建物買取請求権と呼ばれるものです。
ただし、建物買取請求権が使えるかどうかは、契約内容や経緯によって判断が分かれることがあります。
「更新しないなら建物を買い取ってもらえるはず」と自己判断せず、事前に専門家へ確認することをおすすめします。
旧借地権は更新したら新法に変わるのか?
原則として、旧借地権は更新しても旧法借地権のままです。
借地借家法は平成4年8月1日に施行されましたが、それ以前に設定された借地権の更新については、旧借地法の規律に従うとされています。
そのため、旧法借地権の更新契約を作成する場合は、契約書の中に次のような文言を入れておくと安心です
「本契約は、旧借地法に基づく借地契約の更新であることを確認する。」
旧借地権の更新後の期間
旧借地権で更新後の契約期間には注意が必要です。
旧法借地と新法借地では更新後の期間が異なります。
旧借地法では、建物が堅固建物か非堅固建物かによって更新後の期間が異なります。実務上、旧法借地権では堅固建物の場合30年、非堅固建物の場合20年と整理されることがあります。
新法借地では、建物が堅固か非堅固かにかかわらず、最初の更新時(1回目の更新)は20年とされ、2回目以降更新は期間10年とされます。
借地借家法では、借地人に不利な特約が無効になる場合があります。後から争うよりも、契約締結前には契約内容をあらかじめ確認しながら進める方が安心です。
よくある質問
- Q借地権の更新料相場はいくらですか?
- A
法律で決まった一律の相場はありません。実務上は、更地価格の2%〜5%程度、または借地権価格の5%〜10%程度を目安にする考え方があります。ただし、地域、借地権割合、地代水準、契約経緯、借地面積、地主との関係によって変わります。
- Q更新料を払わないと借地権は更新できませんか?
- A
必ずしもそうではありません。更新料は、法律上当然に発生するものではなく、契約書の定めや当事者間の合意、過去の経緯などによって判断されます。裁判例でも、請求があれば当然に更新料支払義務が生じる慣習は存在しないと整理されています。
- Q借地権の契約期間が過ぎていたらどうなりますか?
- A
期間満了後も借地上に建物があり、あなたが土地を使い続け、地主から正当事由のある異議が出ていない場合、法定更新が問題になります。期間が過ぎていたからといって、直ちに借地権がなくなるわけではありません。
- Q更新料が高すぎる場合はどうすればよいですか?
- A
まず、契約書の更新料条項、計算根拠、更地価格、借地権割合、過去の更新料、近隣事例を確認してください。そのうえで、地主へ根拠資料の提示を求め、必要に応じて専門家を交えて協議します。感情的に拒否したり、地代の支払いを止めたりするのは避けてください。
まとめ|借地権の更新で大切なのは「権利を守りながら、将来の出口を整えること」
借地権の更新で最も大切なのは、契約期間が満了したからといって慌てないことです。
借地上に建物があり、あなたが土地を使い続けている場合、借地契約は更新される可能性があります。地主が更新を拒否するには正当事由が必要です。更新料についても、法律上当然に一律で支払義務が発生するものではなく、契約内容や過去の経緯、合意内容を確認する必要があります。
ただし、借地権の更新は、単なる契約延長ではありません。
更新時に条件を曖昧にしたままにすると、将来の相続、売却、建替え、地主との関係で問題が大きくなることがあります。
だからこそ、あなたが借地権の更新で考えるべきことは、次の一つです。
「今の更新を、将来の家族や資産整理で困らない形に整えること」
借地権の更新は、目の前の契約手続きではなく、あなたと家族の不動産を将来に向けて守るための大切な節目です。
借地権の更新は、契約の種類(旧法借地権・普通借地権・定期借地権)や個別の契約内容によって取るべき対応が大きく変わります。ご自身のケースがどれに当たるか判断に迷う場合や、地主との交渉が難航している場合は、早めに弁護士や借地権に詳しい不動産会社へ相談することをおすすめします。
