- 年収から借入可能額を計算する具体的な式
- 借入可能額・年齢の上限と、それぞれの年代で気を付けたいポイント
- 物件そのものの状態が借入に影響する理由
借入期間は「最長35年」「最長50年」という商品上の限度だけでなく、あなたの完済時年齢や物件の築年数、借地契約の残存期間などによって短くなることがあります。
したがって、住宅ローンを検討するときは、借りられる額と、借りてもよい額を分けて考える必要があります。
あなたがこれから住宅購入を検討する、あるいはすでに不動産会社から予算を提示されて「この金額を借りて本当に良いのか」と迷っているなら、判断の土台になる内容です。
住宅ローンはいくらまで借りられる?借入可能額の決まり方
借入可能額を左右する4つの基準
金融機関があなたの借入可能額を審査するとき、主に見ているのは次の4つです。
| 基準 | 内容 |
| 年収 | 給与所得者は源泉徴収票、自営業者は確定申告書などで確認 |
| 返済負担率(返済比率) | 年収に占める年間返済額の割合。上限は年収に応じて30〜35%程度に設定されるのが一般的 |
| 審査上の金利 | 実際の適用金利とは異なる金利を使って返済能力を確認する金融機関もある。基準は金融機関ごとに異なる |
| 物件の担保評価 | 借入額が物件の資産価値を上回っていないか |
このうち、あなたが最も誤解しやすいのが審査金利です。
金融機関によっては、実際の適用金利とは別に、金利上昇を想定した「審査金利」を使って返済能力を確認します。
審査金利の有無や水準は金融機関によって異なり、公表されていない場合もあります。実際の適用金利より高い金利を使って審査する金融機関では、住宅ローンシミュレーターで算出した金額より、審査上の借入可能額が少なくなることがあります。
年収から借入可能額を計算する方法
借入可能額は、次の式で概算できます。
借入可能額 = 年収 ×(返済負担率の上限) ÷ 12ヶ月 ÷ 審査金利での毎月返済係数
返済負担率とは、年収に対して、年間の借入返済額がどの程度を占めるかを示す割合のことです。
住宅ローンの借入可能額を計算するときに使われる代表的な指標として使われています。
【フラット35】では、年収400万円未満の場合は総返済負担率30%以下、年収400万円以上の場合は35%以下という基準が公表されています。ただし、これは【フラット35】の基準であり、すべての金融機関に共通する基準ではありません。
*毎月返済係数 = r × (1+r)^n ÷ {(1+r)^n − 1}
r:月利(審査金利 ÷ 12)
n:返済回数(返済年数 × 12ヶ月)
この係数に借入元本をかけると「毎月の返済額」になります。逆に、毎月返済額の上限をこの係数で割れば「借入可能な元本」が出ます。
例:審査金利3.0%・35年で実際に毎月返済係数を計算すると
Step 1:月利を出す
r = 3.0% ÷ 12 = 0.0025
Step 2:n(返済回数)を出す
n = 35年 × 12ヶ月 = 420回
Step 3:(1+r)^n を計算する
(1.0025)^420 ≈ 2.8538
Step 4:係数を計算する
係数 = 0.0025 × 2.8538 ÷ (2.8538 − 1)
= 0.0071346 ÷ 1.8538
≈ 0.003848(毎月、借入元本の約0.3848%を返済する計算)
Step 5:借入可能額を逆算する
月々返済額の上限 14万5,800円 ÷ 0.003848 ≈ 3,790万円
もう少しかみ砕くと、
- まず「年間返済額の上限」を出す(年収 × 返済負担率)
- その年間返済額を、審査金利・借入期間で借りた場合の毎月返済額に換算し、そこから借入可能な元本を逆算するという2段階です。
この計算は審査金利や返済期間によって結果が大きく変わるため、あなたが自分で試算する場合は、実際の適用金利ではなく、金融機関が使う審査金利に近い水準で試算することをおすすめします。
例えば、年収500万円、返済負担率35%、35年返済という同じ条件でも、計算に使う金利を年0.5%とした場合と年3.0%とした場合では、計算上の借入可能額に大きな差が生じます。
ただし、これは金利条件だけを変えた試算例です。実際の借入可能額は、金融機関の審査方法、他の借入、年齢、勤務状況、物件の担保評価などによって異なります。
借入可能額は住宅ローンシミュレーションで簡単に出せます。
*住宅ローンシミュレーション
年収別の住宅ローン借入可能額の目安
返済負担率35%で試算した場合の借入可能額の目安は次のとおりです(審査金利3.0%・返済期間35年・元利均等返済を想定)。
| 年収 | 年間返済額の上限 | 借入可能額の目安(返済負担率35%) |
| 400万円 | 140万円 | 約3,030万円 |
| 500万円 | 175万円 | 約3,790万円 |
| 600万円 | 210万円 | 約4,550万円 |
| 700万円 | 245万円 | 約5,310万円 |
| 800万円 | 280万円 | 約6,060万円 |
この表は、特定の金融機関の融資承認額を保証するものではありません。
同じ年収でも、次の条件によって借入可能額は変わります。
例えば、審査上、自動車ローンの毎月返済額3万円が年間返済額に含まれる場合、住宅ローンに充てられる返済枠がその分少なくなります。
仮に審査金利3.0%、35年返済で試算すると、借入可能額への影響は約780万円です。ただし、実際の影響額は金融機関の審査金利、住宅ローンの返済期間、自動車ローンの残存期間などによって異なります。
事前審査を申し込む前に、現在の借入残高と毎月返済額を整理しておきましょう。
住宅ローンは年収の何倍が理想なのか
「年収の何倍まで借りていいのか」は、あなたが最も気になるポイントの一つだと思います。
住宅金融支援機構のフラット35利用者調査では、住宅取得に必要となった所要資金を世帯年収で割った「年収倍率」が公表されています。住宅の種類によって異なりますが、おおむね年収の6~7倍台となる区分があります。
ただし、この年収倍率は住宅ローンの借入額だけではなく、頭金などを含む所要資金を世帯年収で割った数字です。また、フラット35利用者の実績であり、すべての住宅購入者を表すものではありません。
同じ年収500万円、同じ借入額3,000万円でも、次の条件が違えば家計への負担は大きく異なります。
- 子どもの人数と教育費
- 共働きを継続できる期間
- 自動車の保有台数
- 親への援助や介護費用
- 購入する住宅の維持管理費
- マンションの管理費・修繕積立金
- 固定資産税
- 定年までの年数
- 老後資金の準備状況
そのため、「年収の何倍だから安全」と一律に判断するのではなく、毎月返済額と購入後の維持費を家計に当てはめる必要があります。
年収倍率は、実際の住宅取得価格と世帯年収の関係を示す統計上の数字であり、あなたの家族にとって安全な借入額を示す基準ではありません。
住宅ローンは何年・何歳まで借りられる?借入期間の限度
借入期間の上限は最長35年が一般的。商品によっては40年・50年
住宅ローンの借入期間は、多くの金融機関で最長35年が基準です。近年は最長50年の超長期住宅ローンを扱う金融機関も出てきており、30歳以下であれば利用しやすい環境が整いつつあります。ただし借入期間が長くなるほど利息の総支払額は増えるため、月々の負担軽減と総支払額のバランスを考える必要があります。
完済時年齢の上限から借入可能年数を逆算する
借入期間を考えるうえで、あなたが実際に確認すべきなのは「借入時の年齢上限」よりも「完済時の年齢上限」です。多くの住宅ローンでは、借入時の年齢は70歳が上限、完済時年齢は80歳が上限に設定される傾向にあります。
この上限から、あなたが何年借りられるかは次のように逆算できます。
以下は、借入額4,000万円、年利1.5%、元利均等返済、ボーナス返済なしとして試算した例です。
| 申込時年齢 | 借入期間の上限の目安 |
| 30歳 | 35年 |
| 40歳 | 35年 |
| 50歳 | 30年 |
| 60歳 | 20年 |
| 65歳 | 15年 |
※フラット35の借入期間は、原則として「80歳-申込時年齢(1年未満切上げ)」と35年のいずれか短い期間が上限です。実際の年齢や申込日によって、上表より1年短くなる場合があります。
これは【フラット35】を例にした目安です。民間金融機関では、申込時年齢、完済時年齢、団体信用生命保険の条件などが異なります。
また、同じ年齢であっても、借入期間が短くなれば毎月返済額が増えるため、希望額を借りられないことがあります。
この記事を読んで「自分の場合は?」と思った方へ
相続・借地・共有・空き家・不動産活用など、
今のお悩みに近いコースを選び、いくつかの質問に答えると、
次に確認したいことを整理できます。
※売却や契約をおすすめする診断ではありません。
40代・50代から借りる場合に気をつけたいこと
あなたが40代・50代であれば、以下の2点を特に意識してください。
- 借入期間が短くなる分、月々の返済額が上がる
商品上は、40代後半でも30年前後の借入期間を選べる場合があります。例えば、完済時年齢を80歳未満とする商品では、49歳で申し込む場合、借入期間の上限はおおむね30年となります。
ただし、借りられる期間と、退職後まで無理なく返せる期間は別です。65歳から70歳頃までの完済を目標とする場合、40代後半では20年前後から25年程度の返済計画を検討することになります。 - 退職後の返済原資を具体的に考える
現役時代の給与収入を前提に借入可能額まで借りてしまうと、定年後は年金収入や貯蓄の取り崩しで返済を続けることになりかねません。退職金での繰上返済を見込む場合も、金額と時期をあらかじめ具体的に決めておくことが大切です。
国土交通省の2025年度住宅市場動向調査では、住宅取得世帯の世帯主平均年齢は、新築戸建住宅が38.9歳、新築マンションが44.4歳、中古戸建住宅が47.3歳、中古マンションが46.7歳でした。これは住宅ローン承認者だけの平均ではありませんが、40代で中古住宅やマンションを購入する世帯が珍しくないことを示す参考になります。
住宅取得後には、修繕費、医療費、介護費、家電の買替えなど、予期しない支出が発生します。
退職金の全額を住宅ローン返済に充てる前提ではなく、老後の生活資金を残した計画を立てる必要があります。
借入期間を長くするメリットと注意点
借入期間を長く設定することには、次のようなメリットと注意点があります。
借入期間を長くするメリット
- 毎月の返済額を抑えられ、家計に余裕を持たせやすい
- 団体信用生命保険の保障も、原則として住宅ローン残高がある期間続く
(ただし、加入可能年齢や保障終了年齢、保障内容は商品によって異なります。)
買入期間を長くする注意点
- 借入期間が長いほど、支払う利息の総額は増える
- 完済時年齢が上がるため、退職後の返済原資(年金・貯蓄)を具体的に見込む必要がある
- 変動金利型や固定金利期間選択型の場合、借入期間が長いほど、将来の金利変動の影響を受ける期間も長くなる
| 返済期間 | 毎月返済額の概算 | 総返済額の概算 | 支払利息の概算 |
| 35年 | 約12万2,500円 | 約5,144万円 | 約1,144万円 |
| 40年 | 約11万900円 | 約5,322万円 | 約1,322万円 |
| 50年 | 約9万4,800円 | 約5,688万円 | 約1,688万円 |
35年から50年に延ばすと、毎月返済額は約2万7,700円下がります。
一方で、総返済額は約544万円増えます。
借入期間は「限度額まで長く借りられるかどうか」ではなく、「あなたの働き方やライフプランに沿った期間かどうか」で決めるのが本来の考え方です。
借入可能額は、あくまで金融機関の審査基準にもとづく「上限」です。そこには、ローン支払い額以外の負担は含まれていません。
・購入後にかかる固定資産税・修繕費・管理費などの維持費
・教育費や車の買い替えなど、将来のライフイベントにかかる支出
・金利が上昇した場合の返済額の増加分
限度額いっぱいまで借りてしまうと、審査には通っても、その後の生活に長期間ゆとりがなくなるリスクがあります。「審査に通る金額」と「借りても安心な金額」を分けて考えることが、住宅購入で後悔しないための第一歩です。
物件の状態によって借入可能額や返済期間が変わる
住宅ローンの借入可能額は、あなたの年収や年齢だけで決まるわけではありません。購入する物件の担保評価が低い場合は、希望額まで借りられなかったり、利用できる金融機関が限られたりすることがあります。
特に、再建築不可、違法増築、未登記部分、借地権、旧耐震基準などの物件は、通常より慎重な審査が行われる可能性があります。
そのため、年収や年齢だけで住宅ローンの可否を判断するのではなく、物件ごとに次の項目を確認する必要があります。
- 旧耐震基準か新耐震基準か
- マンションの管理状態と修繕積立金
- 再建築不可物件
- 借地権付き物件
- 違法増築や未登記部分がある物件
- 土地と建物の権利関係
※物件審査で確認される内容については、別記事「住宅ローン審査の基準とは?人・物件で見られる項目、落ちる理由と対策」で詳しく解説しています。
まとめ|借りられる額と借りてもよい額は違う
住宅ローンで借りられる金額は、年収だけで決まりません。
金融機関は、あなたの年齢、年収、勤続年数、他の借入、健康状態などに加えて、購入する物件の担保評価、築年数、耐震性、適法性、管理状態、権利関係を確認します。
借入期間も、住宅ローン商品の最長期間だけではなく、完済時年齢や物件条件によって決まります。
ただし、金融機関から提示された借入可能額を、そのまま住宅購入予算にしてはいけません。
大切なのは、次の2つを分けることです。
- 金融機関の審査上、借りられる金額
- あなたの家族が安心して返せる金額
不動産会社や金融機関から提示された借入可能額が、あなたの家族にとって適切な購入予算とは限りません。
株式会社ユー不動産コンサルタントでは、物件価格や住宅ローンだけでなく、購入後の維持費、将来の売却可能性、物件の権利関係、家族の生活設計まで含めて購入判断を整理します。
特に、次のような段階でご相談いただけます。
- 審査には通りそうだが、本当にこの物件を購入してよいか迷っている
- 不動産会社から提示された購入予算が妥当か確認したい
- 中古住宅や借地権付き物件の将来価値が不安
- 40代・50代からの返済計画を第三者に確認してもらいたい
- 売却しやすさや権利関係を含めて物件を判断したい
住宅ローンの承認を得ることが、住宅購入のゴールではありません。
物件自体に将来の価値があり、住宅購入後もあなたの家族が安心して生活を続けられるか。
この2つを確認したうえで、購入する金額と借入期間を決めることが重要です。
