賃貸借契約期間中のルール

賃借物の修繕に関する要件の見直し

借りている建物が雨漏りするなど,賃借物の修繕が必要な場合でも,賃借物はあくまで賃貸人のものですから,賃借人が勝手に手を加えることはできまん。
しかし,
実際に賃借物を使っているのは賃借人ですから,賃貸人が修繕してくれない場合でも賃借人は一切自分で修繕することができないとすると,不便です。

改正前の民法には,どのような場合に賃借人が自分で修繕をすることができるのかを定めた規定はありませんでした。

例えば

Aさんは,Bさんから家を借りて住んでいる。
備付けのエアコンが故障したため,
Aさんは,Bさんに対してたびたび修理を依頼しているが,なかなか修理してくれない。

Aさんは,Bさんから家を借りて住んでいるが,台風で屋根が損傷し,雨漏り
がするようになった。
次の台風が接近しており,早く修理したい。

改正後の民法では,
① 賃借人が賃貸人に修繕が必要である旨を通知したか,又は賃貸人がその旨を知ったのに,賃貸人が相当の期間内に必要な修繕をしないとき

② 急迫の事情があるときには,賃借人が目的物を修繕することができることとされました。

これにより,上記①や②の場合には,賃借人が目的物を修繕したとしても, 賃貸人から責任を追及されaることはないことが明確になりました。

賃貸不動産が譲渡された場合のルールの明確化

建物の賃貸借契約が続いている間に建物の所有者が代わった場合には,

その後は誰が賃貸人になるのか,

新しい所有者は賃料を請求することができるのかなどが問題になります。

これらの点について,改正前の民法には規定が設けられていませんでした。

例えば

Bさんは,Aさんに対して自分が所有する建物を貸していたが,その期間中に,Cさんにその建物を売却した。
建物の新しい所有者になったCさんは,Aさんに賃料を請求したが,
Aさんは賃料をBさんとCさんのどちらに支払えばいいのかわからないといって,支払ってくれない。

改正後の民法では,

賃貸借の対抗要件を備えていた場合に,賃借物である不動産が譲渡されたときは,賃貸人としての地位は,原則として不動産の譲受人(新たな所有者)
に移転するという規定を設けました。
また,

不動産の譲受人(新たな所有者)が,賃借人に対して賃料を請求するためには,貸借物である不動産の所有権移転登記が必要である旨の規定を設けました。

上記の事例では,Cさんが賃借物である建物の所有権移転登記を備えれば,

Aさんに対して賃料を請求することができ,AさんはCさんに賃料を支払わなければなりません。
Cさんが登記を備えていない間は,A さんは引き続き B さんに賃料を支払うことができますし,賃料を供託することもできます。

次項では、賃貸借契約終了時のルール 

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