土地や建物を売って利益が出た場合、売却した年の1月1日時点の所有期間が5年を超えるかどうかで、原則として税率が変わります。 5年超なら長期譲渡所得、5年以下なら短期譲渡所得です。「買ってから5年たった日に売れば長期」とは判定しないため、売却の時期を考える際には日付の確認が欠かせません。

ただし、自宅には3,000万円の特別控除などがあり、所有期間だけで税額が決まるわけではありません。税率だけを見て売却を急いだり、反対に先延ばしにしたりせず、実際の税額と家族の予定を並べて考えましょう。

この記事では、長期・短期の判定方法と税率を確認したうえで、税率が変わるまで売却を待つべきかを、不動産の管理と家族の予定も含めて考えます。

勘違いに注意|「所有期間5年・10年」の正しい数え方

判定基準は「買った日から売った日まで」ではなく、売った年の1月1日

長期と短期を分けるのは、売却日ではなく、売却した年の1月1日時点の所有期間です。

区分売却した年の1月1日時点の所有期間合計税率の目安
長期譲渡所得5年を超える20.315%
短期譲渡所得5年以下39.63%
10年超のマイホームの軽減税率(要件を満たす場合)家屋・敷地ともに10年を超える課税譲渡所得6,000万円以下の部分は14.21%。6,000万円を超える部分は20.315%

※10年超の行は長期譲渡所得の軽減税率の特例であり、5年超の通常税率と重ねて適用するものではありません。自宅なら誰でも適用できるわけではなく、居住状況などほかの要件や確定申告も確認が必要です。3,000万円特別控除を併用する場合、6,000万円の境目は控除後の課税譲渡所得で判定します。

例えば、2021年4月に購入した土地を、2026年5月に売るとします。売却時点では購入から5年を超えていますが、2026年1月1日時点では約4年8か月なので、原則として短期譲渡所得です。同じ土地を2027年に売れば、2027年1月1日時点では5年を超えているため、原則として長期譲渡所得になります。10年超のマイホームの軽減税率も、売却年の1月1日時点で家屋と敷地がともに10年を超えるかを確認します。

※参照:国税庁「長期譲渡所得の税額の計算」「短期譲渡所得の税額の計算」「譲渡所得の申告期限」

年末の契約・引渡しを調整する場合は「譲渡した年」も確認する

年末が近く、翌年になると長期譲渡所得に変わる場合には、売却する時期を比較する価値があります。例えば、買主との合意を得て、引渡しを翌年1月以降にする方法が考えられます。ただし、引渡しを翌年にすれば必ず翌年分の譲渡になる、とだけ説明するのは正確ではありません。

税務上の譲渡の日は原則として買主への引渡日ですが、売買契約の効力が生じた日を譲渡の日として申告することもできます。年内に契約して翌年に引き渡す場合は、どちらの年分として申告するかで所有期間の判定が変わり得ます。売主・買主の住み替え、融資、引渡しの条件もあるため、契約前に税理士と不動産会社で日程と税額を確認しましょう。

長期と短期では、不動産売却時の税率はいくら違う?

土地や建物の売却益にかかる税金は、給与などの所得と分けて計算します。まず、次のように税金の計算対象となる金額を求めます。

譲渡価額-取得費-譲渡費用-適用できる特別控除額=課税譲渡所得

取得費には購入代金や購入時の一定の費用などを含み、建物の取得費は減価償却費相当額を差し引いて計算します。譲渡費用は、仲介手数料など売却のために直接かかった費用です。売却代金そのものに税率を掛けるわけではありません。

所有期間が5年を超える場合:原則20.315%

長期譲渡所得は、所得税15%、住民税5%に、所得税額に対する付加税相当分0.315%を加えた合計20.315%が目安です。

所有期間が5年以下の場合:原則39.63%

短期譲渡所得は、所得税30%、住民税9%に、所得税額に対する付加税相当分0.63%を加えた合計39.63%が目安です。「0.63%」は30%×2.1%であり、譲渡所得に一律2.1%を足したものではありません。

※2026年分までは所得税額に復興特別所得税2.1%がかかります。2027年分以後は防衛特別所得税1%と復興特別所得税1.1%となりますが、所得税額に対する合計2.1%という割合は同じです。上の合計税率にはこれらを織り込んでいます。個別の申告額は税理士に確認してください。

課税譲渡所得が1,000万円なら、長期と短期でどう違う?

※『課税譲渡所得(かぜいじょうとしょとく)』とは、売却額から取得費・譲渡費用を引き、適用できる特別控除額も差し引いた、税率を掛ける対象の金額

特例がなく、課税譲渡所得が1,000万円になる場合を例に、税率による違いを見てみましょう。
*売却価格が1,000万円という意味ではありません

区分計算税額の目安
長期譲渡所得1,000万円×20.315%203万1,500円
短期譲渡所得1,000万円×39.63%396万3,000円
差額193万1,500円

同じ課税譲渡所得なら、この例では税額に大きな差が出ます。ただし、「来年売れば必ず約193万円得をする」という意味ではありません。 待っている間の管理費・固定資産税、売却価格の変化、家族がその不動産を使う予定なども変わり得るためです。

なお、自宅には3,000万円特別控除が使える場合があります。上の試算を自宅の売却にそのまま当てはめず、次に特例の適用可否を確認しましょう。

3,000万円特別控除と10年超の軽減税率は併用できる?

要件を満たすマイホームなら、3,000万円特別控除と10年超の軽減税率は併用できます。 ただし、両者は役割が異なります。前者は譲渡所得から控除する制度で、後者は控除後に残った課税譲渡所得に適用する税率の特例です。

3,000万円特別控除は所有期間5年以下でも検討できる

この特例には「5年を超えて所有していること」という要件はありません。売却年の1月1日時点で短期譲渡所得に当たる場合も、居住の実態など所定の要件を満たせば適用を検討できます。譲渡所得が3,000万円以内で、全額を控除できれば、その譲渡所得にかかる税額は0円です。つまり、短期の税率39.63%をそのまま売却益に掛けて、売却時期を判断する必要はありません。

※参照:国税庁「マイホームを売ったときの特例」

10年超のマイホームは控除後の利益に軽減税率を使える場合がある

売却年の1月1日時点で家屋と敷地の所有期間がともに10年を超えるなど、要件を満たすマイホームには、軽減税率を使える場合があります。3,000万円特別控除を併用するなら、まず控除額を差し引き、残った課税譲渡所得のうち6,000万円以下の部分に合計14.21%、超える部分に通常の長期税率と同じ合計20.315%が目安となります。控除後に課税譲渡所得が残らなければ、税率の違いによる税額も生じません。

「10年以上住んだ」だけでは、10年超の軽減税率が決まるわけではありません。適用要件や確定申告の確認が必要です。

※参照:国税庁「マイホームを売ったときの軽減税率の特例」

相続した不動産の所有期間は、相続日から数える?

原則として、相続した日から数え直すわけではありません。 相続や贈与で取得した土地・建物は、亡くなった方や贈与した方の取得時期を引き継いで、長期か短期かを判定します。

例えば、親が15年前に購入した土地を今年相続し、その年に売却する場合でも、「相続してから1年以内だから短期」とはなりません。親が取得した日を確認します。親の購入時の契約書などは取得費を調べる資料にもなるため、家族で保管場所を確かめておきましょう。

取得費が分からない場合には概算取得費という方法もありますが、実際の取得費を調べた結果と税額が変わることがあります。資料の探し方は、マルイシ税理士法人「取得費が不明な場合の調べ方と対処法」も参考になります。

※参照:国税庁「相続や贈与によって取得した土地・建物の取得費と取得の時期」

【コンサルタントの視点】税率が下がるまで売却を待つべきか?3つの判断軸

「今売る場合」と「所有期間による税率の区分や、使える特例が変わる年まで待つ場合」で、売却後の手取りと家族の負担を比較します。 税率だけで答えは出ません。まず取得日、取得費、譲渡費用と使える特例を確認し、両方の税額を試算します。そのうえで次の3点を見ていきます。

  1. 減税額と、待つ間の保有コストを比べる

    税率が下がる年まで待てば、税額を抑えられる場合があります。ただし、その間も固定資産税や管理費、修繕費などの支払いは続きます。まずは「税金がいくら減るか」と「売らずに持つことで追加される費用」を比べましょう。

    例えば、家屋と敷地を2016年4月に取得した自宅を、2026年に売る場合と2027年に売る場合を考えます。売却価格などの条件は同じで、両年とも3,000万円特別控除の要件を満たし、控除後の課税譲渡所得が1,600万円になると仮定します。2027年には10年超所有の軽減税率の要件も満たすものとします。

    比較項目2026年に売る2027年まで待って売る
    控除後の課税譲渡所得1,600万円1,600万円
    譲渡所得にかかる税額の目安約325万円約227万円
    待つことで減る税額―約98万円
    待つ間に追加される保有費用―120万円
    税額と追加費用の合計約325万円約347万円

    この仮定では、税額は約98万円減っても、保有費用を含めると待つ場合の負担が約22万円多くなります。もちろん、実際には売却後の住居費や売却価格も変わり得ます。「税率が下がるから待つ」と決める前に、待つことで増える支払いを含めて比較することが大切です。

  2. 待つ間に売却価格が変わる可能性を比べる

    将来の売却価格は、今の査定額のままとは限りません。「希望価格に届かないので、値引きに応じず数年待とう」と考える場合も、価格が上がる場合と下がる場合の両方を想定してみましょう。

    例えば、現在の売出し希望額が5,000万円で、購入希望者から10%の値引きを求められているとします。5年後の価格が、現在の希望額から10%上がる場合と、10%下がる場合を並べたものが次の表です。

    売却時期と条件売却価格の仮定今、値引きに応じて売る場合との差
    今、10%の値引きに応じる4,500万円―
    5年後、現在の希望額から10%上がる5,500万円+1,000万円
    5年後、現在の希望額から10%下がる4,500万円0円

    5年後に価格が下がれば、今値引きに応じて売る場合と売却価格は同じでも、5年分の保有費用が増えます。反対に価格が上がっても、その差額がすべて手元に残るわけではありません。売却費用や譲渡所得にかかる税金も変わり得るため、売却価格ではなく、費用と税金を差し引いた後の手取りで比べましょう。

    ※5年後の価格は、価格変動の影響を考えるための仮定であり、値上がり・値下がりを予測するものではありません。

  3. 「待つ間だけ貸す」場合の売却・入居時期を確認する

    「売るまでの間は家賃を得たい」と考える方もいるでしょう。しかし、自宅を貸す場合は、家賃収入だけでなく、以前住んでいた自宅の3,000万円特別控除を使える売却期限と、入居者が退去する時期を確認する必要があります。

    例えば、2022年4月に取得した自宅から2026年5月に転居するとします。「その年に売る場合」と「月額家賃20万円で5年間貸し、2031年に売る場合」を比べてみましょう。説明のため、両方とも売却価格を5,000万円、取得費・譲渡費用を差し引いた譲渡所得を1,000万円と仮定します。

    比較項目2026年に売る5年間貸し、2031年に売る
    売却価格の仮定5,000万円5,000万円
    所有期間による区分短期譲渡所得長期譲渡所得
    3,000万円特別控除要件を満たせば適用を検討できるこの例では売却期限を過ぎる
    譲渡所得にかかる税額の目安控除を適用できれば0円約203万円
    家賃収入なし満室が続けば総額1,200万円

    2026年中に住まなくなった自宅について、3,000万円特別控除を検討できる売却期限は、原則として2029年12月31日です。この例で2031年まで貸してから売ると、所有期間は長期譲渡所得に変わりますが、以前住んでいた自宅としての特別控除は期限を過ぎます。

    また、表の1,200万円は5年間空室がなく、毎月20万円の家賃が入った場合の総額です。管理費、修繕費、固定資産税、家賃収入にかかる税金などを引いた手取りではありません。実際には建物の減価償却や売却価格の変化によって譲渡所得も変わるため、表の税額も比較のための仮定です。

    そして、5年後に売ろうと思っても、貸主の希望だけで入居者に退去してもらえるとは限りません。家族がその家に住みたい時期も含め、「いつ、どのような状態で売却できるか」まで確認してから貸すことが大切です。

また、以前住んでいた自宅の3,000万円特別控除には、原則として「住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで」に売る期限があります。貸したことだけで直ちに対象外にはなりませんが、期限と賃貸借契約の期間を一緒に考える必要があります。

最後に、家族がその不動産を将来使う予定と、待つ間の管理を誰が担うかも確認しましょう。税額を抑えられても、家族の生活や負担に合わなければ、その選択が最適とは限りません。

所有期間と不動産売却の税金でよくある質問

Q
土地と建物の取得時期が違う場合はどうしますか?
A

それぞれの取得時期を確認します。 土地を購入した後に家を建てた場合など、土地と建物の所有期間が異なることがあります。特に10年超のマイホームの軽減税率を考える場合は、両方の所有期間を確認してください。

Q
売却価格が購入価格より低ければ、譲渡所得は出ませんか?
A

必ずしもそうとは限りません。 建物の取得費は所有期間中の減価償却費相当額を差し引いて計算するため、購入時の代金と売却価格の比較だけでは判断できません。購入時の資料と売却費用をそろえて試算します。

Q
10年以上持っている賃貸物件にも14.21%の税率を使えますか?
A

所有期間が10年を超えるだけでは使えません。 14.21%は一定の要件を満たすマイホームの軽減税率で、一般の賃貸物件にそのまま適用できる税率ではありません。

まとめ|まず取得日と特例を確認し、家族の予定と並べて考える

不動産売却の税率は、売却した年の1月1日時点の所有期間が5年を超えるか、5年以下かで原則変わります。自宅には3,000万円特別控除や10年超の軽減税率を使える場合もあり、実際に納める税額は特例の適用によって変わります。

売却を考え始めたら、取得日が分かる資料、購入時の費用が分かる資料、売却見込み額をそろえて税額を試算しましょう。そのうえで、待つ間の管理と、家族が不動産をどう使いたいかを確認することが、納得のいく判断につながります。

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