公図と現況のずれは、古い図面の精度、土地の分筆などの経緯、現在の塀や通路の位置など、複数の要因によって生じます。

図面と現地が違って見えても、すぐに公図が間違っている、隣地の塀や建物が越境しているとは判断できません。 最初に対象の地番と公図の種類を確認し、測量図や登記資料、現地の状況を照合することが大切です。

「公図では四角い土地なのに、現地の形が違って見える」
「地積測量図と公図が合わないけれど、どちらを信じればよいのだろう」
「このまま土地を売却しても、後から問題にならないだろうか」

このように迷ったときは、何が違い、その違いが売却や利用にどう影響するのかを分けて整理しましょう。

こんにちは。台東区上野を拠点に、借地権・底地と不動産相続の整理を支援している、株式会社ユー不動産コンサルタント代表の脇保雄麻です。

この記事では、公図と現況がずれる原因、確認する資料と手順、必要になる対応、売却・購入前の注意点を解説します。

公図と現況が違うとき、最初に確認すること

公図と現況のずれを調べるときは、まず「どの土地の、どの資料を、何と比べているか」を確認します。

現況とは、現在の土地や建物、塀、通路などの実際の状態です。ただし、目に見える塀やフェンスが、そのまま登記上の土地の境を示すとは限りません。

対象の土地と地番が合っているか

公図に記載される地番は、登記上の土地を識別する番号です。郵便物などに使う住所と異なる場合があります。

一つの住宅敷地が複数の地番で構成されていたり、道路に出る通路が別の土地になっていたりすることもあります。

自宅の住所から調べた一つの地番だけで判断せず、敷地や通路に含まれる土地を確認してください。

調べ方は、「住居表示と地番の違い・住所から地番を調べる方法」で解説しています。

公図の「分類」欄を確認する

実務で広く公図と呼ばれる土地の地図には、「14条地図」と「地図に準ずる図面」があります。

公図の種類確認しておきたい特徴
14条地図測量に基づき、現地で土地の位置を復元できる精度を備える
地図に準ずる図面古い図面を基にしたものが多く、位置や形状が現地と異なる場合がある

国土交通省も、法務局に備え付けられた図面には、旧土地台帳附属地図を基にしたものがあり、現況と大きく異なる場合があると説明しています。
*参照:国土交通省「登記所備付地図の現状」

手元の図面の分類欄を確認し、どちらの資料かを把握しましょう。詳しい違いは、「公図の種類とは?14条地図と地図に準ずる図面の違い・見分け方」をご覧ください。

公図と現況にずれが生じる主な原因

公図と現況のずれには、図面に由来するものと、現地の利用状況や資料の読み方に由来するものがあります。

古い測量や図面の精度が影響している

地図に準ずる図面には、明治時代の地租改正時に作成された地図などを基にしたものがあります。

当時の測量方法や図面の作成・管理の経緯によって、土地の位置、形状、距離などに誤差が含まれる場合があります。
*参照:国土交通省「地籍調査とは」

また、古い図面が電子化され、鮮明に印刷されていても、元の情報の精度まで高くなったとは限りません。

「法務局から最近取得したから、現在の土地の形を正確に表している」とは判断しないようにしましょう。

現在の塀や通路が、筆界と一致していない

筆界とは、登記上の土地を区画する境のことです。

塀を敷地の内側に設置していたり、隣地との取り決めによって一部を通路として使っていたりすると、見た目の利用範囲と筆界が異なることがあります。

例えば、説明用の例として、隣地との境から自分の土地側へ少し離して塀を設置した場合を考えてみましょう。この場合、塀の外側にも自分の土地が残る可能性があります。

反対に、塀や建物が隣地側へ越境している可能性もあります。見た目だけで結論を出さず、設置の経緯と資料を確認する必要があります。

境界標が見つからない、位置に疑問がある

測量図に境界標が記載されていても、現地では土に埋もれていたり、工事などで失われていたりする場合があります。

見つかった杭や金属標が、調べている筆界点のものかどうかも確認が必要です。

境界標が見つからないからといって、近くの塀の角を境界と決めることは避けてください。

分筆・合筆の前後で、異なる資料を比較している

分筆は、一筆の土地を複数の土地に分ける登記です。合筆は、複数の土地を一筆にまとめる登記です。

古い測量図が分筆前の土地全体を示しているのに、現在の一筆だけの公図と比べると、形や面積が合わないように見えることがあります。

資料の作成年月日、対象地番、分筆線などを確認し、同じ時点・同じ範囲の土地を比べているかを確かめましょう

形・位置・面積・通路のどこが違うのか整理する

「公図と合わない」という説明だけでは、必要な調査を絞れません。気になる点を具体的に書き出してみましょう。

違って見えること最初に確認すること
土地の形が違う公図の種類、対象地番、現在の利用範囲
土地全体の位置がずれている比較した地図の種類、座標系、重ね合わせの方法
面積が違う比較している面積の出典と対象範囲が同じか
塀と図面の線が合わない境界標、塀の設置経緯、境界確認書
通路の位置や幅が違う通路の地番、管理者、契約や利用の取り決め
地番の区切りが現地に見当たらない複数の土地を一体で利用していないか

面積の違いは、公図の見た目とは分けて確認する

公図を定規で測っただけでは、土地の正確な面積を判断できません。

面積を調べるときは、登記事項証明書に記載された「登記面積」と、測量で求めた「実測面積」を照合します。

実測面積が登記面積より大きいことを「縄延び」、小さいことを「縄縮み」と呼ぶことがあります。ただし、面積差が生じた原因は土地ごとに異なります。

面積に差があることと、公図の線に誤りがあることは同じ問題とは限りません。

航空写真や地図への重ね合わせだけで判断しない

公図を航空写真やインターネット上の地図に重ねると、道路や建物と線が合わない場合があります。

このときは、公図そのものの精度に加えて、使用したデータの座標系、配置方法、写真の撮影時期なども確認が必要です。

画面上のずれだけで、隣地の越境や土地の所有範囲を確定することはできません。

地積測量図と公図が合わない場合はどうする?

地積測量図と公図が合わない場合は、どちらか一方を無条件に優先するのではなく、作成経緯と現地との対応を確認します。

公図は土地の区画や隣接関係を示す資料です。地積測量図は、土地の測量結果や面積の計算方法などを示す資料で、役割が異なります。

地番・作成年月日・測量範囲を照合する

最初に、次の点を確認してください。

  • 同じ地番の土地を比較しているか
  • 分筆前と分筆後の図面を混同していないか
  • 土地全体を測量した図面か、一部の測量情報を示す図面か
  • その後に地積更正などの登記が行われていないか
  • 境界標や座標値など、現地と照合できる情報があるか

古い分筆の地積測量図では、分筆前の登記面積から、切り離す部分を実測した面積を差し引いて、残った土地の面積を求めている場合があります。この場合、残った土地全体を実測して求めた面積とは限りません。

図面の見方や古い資料の注意点は、「地積測量図とは?取得方法・見方・公図や確定測量図との違い」をご覧ください。

作成年が新しいことだけで判断しない

新しい図面でも、作成後に現地の塀や境界標の状況が変わっている可能性があります。

一方、古い図面でも、境界標や他の資料との対応が分かれば、調査の手掛かりになります。

土地家屋調査士には、図面同士がどう違うのかに加え、「売却に使いたい」「通路の範囲を確認したい」など、調べる目的も伝えましょう。

公図と現況のずれを確認する手順

あなたが最初に行うことは、手元の資料を集め、疑問点を説明できる状態にすることです。すべての資料をそろえてからでなければ相談できない、というわけではありません。

  1. 公図・登記資料・測量図を集める

    まず、次の資料があるか確認します。

    資料主な確認内容
    公図(14条地図・地図に準ずる図面)地番、区画、隣接関係
    登記事項証明書所有者、地積、分筆などの登記情報
    地積測量図測量結果、面積の求め方、筆界点の情報
    確定測量図・境界確認書過去の測量と関係者による境界確認の内容
    現況測量図測量時点の建物、塀、道路などの位置
    売買契約書・借地契約書・覚書売買や利用の範囲、当事者間の取り決め

    建物や塀などの位置関係を把握する資料については、「現況測量図で分かることと利用時の注意点」で解説しています。

  2. 気になる場所を写真とメモで残す

    自分の敷地や公道など、立ち入ることができる場所から、境界標、塀、通路などを撮影します。

    写真には、「公図のどの部分か」「何が違って見えるか」をメモしておくと、相談時に説明しやすくなります。

    過去の工事や隣地との話し合いを知っている家族がいれば、覚えている内容も確認しましょう。記憶に基づく情報と、書類で確認できる事実は分けて記録します。

  3. 土地家屋調査士に資料と現地の調査を相談する

    筆界や測量、表示に関する登記の専門家は土地家屋調査士です。

    相談時には、次の3点を伝えると調査の目的が明確になります。

    • どの部分が違って見えるのか
    • 売却・建築・相続準備など、何のために確認したいのか
    • 契約日や引渡し日などの期限があるか

    自分の判断で境界標を動かしたり、公図に合わせて塀を移設したりしないでください。 調査結果を踏まえて、必要な対応を検討します。

  4. 調査範囲・費用・日程を確認する

    必要な作業は、既存資料の確認だけで足りるのか、現地測量や関係者との境界確認まで必要なのかによって変わります。

    費用と期間は、土地の広さ、隣接地の数、資料の有無、道路・水路との境界確認などによって異なります。

    見積りでは金額だけでなく、何を調べるのか、どの図面や書類が成果物になるのか、追加費用が生じる条件まで確認しましょう。

調査結果によって変わる対処法

公図と現況が違うからといって、すべての土地で同じ訂正手続きを行うわけではありません。

調査で分かったこと検討する対応
比較する地番や図面の年代が違っていた対象と時点をそろえて再確認する
境界標が失われている調査・測量結果に基づいて復元を検討する
法務局の地図に誤りがある地図訂正の申出を検討する
登記面積に誤りがある地積更正登記を検討する
塀や通路の利用範囲と筆界が異なる所有・設置・利用の経緯や合意内容を確認する
境界について当事者の認識が異なる専門家への相談や紛争解決手続きを検討する

地図訂正と地積更正登記は対象が異なる

地図訂正は法務局の地図・図面の誤りを訂正する手続きです。地積更正登記は、登記された土地の面積の誤りを訂正する手続きです。

状況によっては、両方を併せて行う必要があります。必要な手続きと資料は、土地家屋調査士や管轄法務局に確認します。
*参照:法務省「地図等の訂正の電子申出について」

現在の塀に合わせて公図の線を引き直す、という単純な手続きではありません。

境界の争いでは、筆界と所有権界を区別する

土地の境界には、登記上の区画を示す「筆界」と、所有権が及ぶ範囲を示す「所有権界」があります。両者が一致しない場合もあります。

筆界の位置を明らかにする制度として、法務局の「筆界特定制度」があります。これは新しい筆界を決める制度ではなく、もともとの筆界を調査して明らかにする制度です。
*参照:法務省「筆界特定制度」

所有権の範囲や越境物の撤去などをめぐる争いは、筆界特定だけで解決するとは限りません。争点に応じて、弁護士への相談や裁判外紛争解決手続なども検討します。
*参照:政府広報オンライン「土地の境界トラブルを裁判なしで解決を図る『筆界特定制度』」

公図と現況がずれていても、土地を売却できる?

公図と現況にずれがあることだけで、直ちに売却できなくなるわけではありません。

ただし、違いの内容が分からないまま契約を進めると、引渡しまでに必要な調査が終わらない、買主の利用計画に影響するなどの問題につながる場合があります。

売却前に確認したい契約条件

売却を進める際は、次の内容を整理しましょう。

  • 売買対象に含める地番と通路・私道の持分
  • 登記面積を基準に売買するか、実測との差を精算するか
  • 引渡しまでに交付する測量図
  • 境界をどのように明示・確認するか
  • 越境や通路の利用条件をどのように扱うか
  • 測量・訂正が期限内に終わらない場合の対応

「公簿売買だから調査は不要」と考えず、面積の扱いと、図面交付・境界確認の約束を分けて確認してください。

確定測量を検討する際の判断点は、「確定測量図とは?現況測量図・地積測量図との違いと土地売却時の注意点」をご覧ください。

購入する場合は、建築や通行への影響まで確認する

購入予定の土地でずれが見つかった場合は、「売主が対応する予定」という説明だけで終わらせず、対応の範囲と完了時期を確認します。

特に、敷地の幅や形状、道路との接し方、通路の利用条件は、建築計画に関係する場合があります。

どこまで確認してから契約するかを、仲介会社、土地家屋調査士、建築士などと整理しましょう。

借地や相続予定の土地では、利用の取り決めも確認する

借地では、公図上の一筆の土地の一部だけを借りていることがあります。その場合、公図の区画と借地契約の対象範囲は同じとは限りません。

借地範囲を調べるときは、契約書、添付図面、覚書、過去の測量資料などを確認します。

相続前の準備では、所有者本人が把握している通路や塀の取り決めを、家族に引き継げる形で整理することも大切です。分からない部分は無理に結論を出さず、未確認の事項として記録しておきましょう。

公図と現況のずれに関するよくある質問

Q
公図と現況では、どちらが優先されますか?
A

一律にどちらかを優先することはできません。公図の種類や作成経緯、測量資料、境界標、利用の取り決めなどを照合して判断します。現在の塀の位置が、そのまま筆界とは限りません。

Q
どの程度のずれなら問題ありませんか?
A

すべての土地に共通する「何センチ以内なら問題ない」という基準だけでは判断できません。地図の精度と、売買・建築・権利関係への影響は分けて確認する必要があります。

Q
地積測量図があれば、公図のずれは解決できますか?
A

地積測量図は重要な調査資料ですが、あるだけで解決するとは限りません。対象地番、測量範囲、作成年月日、現地との対応を確認し、必要な調査や手続きを判断します。

Q
公図のずれは法務局に伝えれば無料で直してもらえますか?
A

連絡しただけで、希望どおりに訂正されるものではありません。誤りを確認するための資料や測量が必要になる場合があり、専門家への調査・測量依頼には費用がかかります。まず管轄法務局や土地家屋調査士に状況を説明してください。

Q
14条地図でも現況と違うことはありますか?
A

あります。14条地図は精度を備えた資料ですが、現在の塀や通路の利用範囲が筆界と異なる場合などがあります。分類だけで判断せず、現地や他の資料との対応を確認します。

まとめ|公図と現況のずれは、原因と利用目的を分けて確認する

公図と現況のずれには、図面の精度、土地の変更、境界標の状況、現在の利用範囲など、さまざまな要因があります。

まずは対象地番と公図の分類を確認し、何が違って見えるのかを書き出しましょう。そのうえで、登記資料、測量図、境界確認書、契約書などを集め、必要な調査を相談します。

売却や購入を予定している場合は、調査結果だけでなく、契約で何を約束し、いつまでに確認するかを明確にすることが大切です。

公図のずれを、契約前にどう扱うか迷っている方へ

「公図と現地が違うと言われたけれど、何を質問すればよいか分からない」
「測量や訂正が必要かもしれないのに、契約の日程が先に決まりそう」
「境界・通路の説明と、契約書の内容が合っているか不安がある」

そのようなときは、契約を決める前に、手元の資料、受けている説明、判断の期限を整理してみませんか。

ユー不動産コンサルタントの「不動産のセカンドオピニオン」は、有料で行う個別相談です。ご相談の目的と資料に応じて、確認できること、追加で質問したいこと、専門家への調査依頼が必要なことを整理します。

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