民法と宅建業法の契約不適合責任
民法改正されて不動産実務においても認識しておかなければならない事項です。
改正民法により瑕疵担保責任から契約不適合責任に変わりました。
宅建業法ではどう変わったのか?
民法と宅建業法の条文を見比べてみると違いが分かります。
こんにちは。
台東区上野で不動産問題解決コンサルティング仲介の
株式会社ユー不動産コンサルタント脇保雄麻です。
今回は、契約不適合責任の民法と宅建業法の違いについてです
瑕疵担保責任が無くなったの?
改正前の民法では、瑕疵担保責任と言われておりました。
俗に隠れた瑕疵と言ったりしておりましたが
・構造上不具合
・シロアリ
・給排水管の不具合
上記3つが基本的な瑕疵担保責任の内容となっておりました。
その他では、心理的瑕疵だったり環境的瑕疵だったりと色々と議論があると思いますが、
いずれにせよ、
改正民法により契約不適合責任になったからと言っても、旧民法の瑕疵担保での責任内容が変わるという事ではありません。
契約不適合責任は、売主が引き渡した目的物が
種類や品質の点で契約内容と異なっていたり,
数量が不足していた場合(契約内容に適合していなかった場合)に
売主が負う責任になります。
契約不適合責任で変わった事
売主は引き渡した目的物に種類や品質または数量不足が生じていた場合に責任を負います。
要するに契約の内容に適合したものを引き渡すという事です。
全宅連の民法改正に関わるガイドブックでの解説では、
①契約および取引の社会通念に照らして
②個々の契約の内容と目的と
取引社会で形成された共通認識を併せて契約の内容と不適合を考慮するとされております。
また、契約に特約事項があれば、それが取引上の社会通念に優先すると記載されておりました。
上記を踏まえて築年数の古い建物を取引することも多いと思いますが、
下記のような特約事項は有効かどうかを確認したところ無効である可能性があるとのことでした。
「本物件は相当年数経過しており、劣化等の進行により今後雨漏りや蟻害等発生する可能性もありその場合の契約不適合責任は売主は負わないものとする」
今後、不動産売買実務にいおいては、特約事項等に記載することが増えてくると思われますが、判例等が無い分未知なことが多いと思います。
また、ガイドブックの解説の中には
契約書記載の内容に適合している品質かどうかが判断されてしまうことから
物件の欠陥・不具合などについて単に特約状況欄に事実を記載するのみでは不十分であり、
買主が自らのリスクとして負担することを容認し、売主にし売主に責任を問わないことを読み取れる記載することが求められるとのことです。
瑕疵担保責任と契約不適合責任の売主の責任
瑕疵担保責任における売主の責任は、
・損害賠償請求
・契約解除
でした。
契約不適合責任に変わって売主の責任が
・損賠賠償請求
・契約解除
・追完(補修)請求
・代金減額請求
上記の赤文字の部分が売主の責任が追及できるようになりました。
民法と宅建業法の条文比較
下記条文が民法での契約不適合責任における追完請求権での条文を転記しました。
引き渡した目的物に種類・品質・数量が契約の内容に適合していない場合は契約不適合責任を負うことになるという事です。
民法第562条
(買主の追完請求権)
引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、買主は、売主に対し、目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる。ただし、売主は、買主に不相当な負担を課するものでないときは、買主が請求した方法と異なる方法による履行の追完をすることができる。
民法が改正されて不動産売買において、数量が契約の内容い不適合ってどういう事?
登記記載面積と実測面積の差異が数量が契約の内容と不適合になってしまうのだとしたら
公簿売買が出来なくなってしまうという事になります。
公簿売買というのは、
売買の対象面積を登記記載面積とし、確定測量をした結果、登記記載面積と違うとなった場合も面積の差異を清算せずに契約するのを公募売買といいます。
公簿売買での取引はよく行われている取引のことで、
公簿上と実測面積に差異が生じた場合に
差額を清算して取引するのを実測清算といいます。
買主側としたら、公簿上よりも実測面積が小さければ清算金を受け取る側になりますが
逆に公簿面積よりも実測面積が大きければ清算金を売買代金とは別に支払うことになります。
不動産実務で公募売買が出来なくなってしまったら、各業界団体等から非難が殺到するだろうなあと想像しながら、宅建業法がどう変わっているか確認してみました。
宅建業法第40条
(担保責任についての特約の制限)
宅地建物取引業者は、自ら売主となる宅地又は建物の売買契約において、その目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合におけるその不適合を担保すべき責任に関し、民法(明治二十九年法律第八十九号)第五百六十六条に規定する期間についてその目的物の引渡しの日から二年以上となる特約をする場合を除き、同条に規定するものより買主に不利となる特約をしてはならない。
2 前項の規定に反する特約は、無効とする。
目的物の種類又は品質に関して契約の内容に適合しないものは契約不適合責任になるとされております。
要するに民法での契約不適合責任では、数量も条文にありましたが宅建業法での条文は数量が条文にありません。
数量までは記載ないので公募売買で実測面積と差異があっても契約不適合責任とならないという事になります。
特別法である宅建業法に数量の規定が無いからと言っても契約内容と実際に異なれば契約不適合責任になるのではと思われます。
それが、全宅でのガイドブックに記載があるように
取引と社会通念と照らして考慮されるのだから、数量が違ってもいいかという事ではないという事です。
不動産取引で数量違いというのが他にすぐに思いつきませんが
極端な例で4LDKの部屋で既契約記載していたが実際には3LDKだったというような場合。
いずれにせよ、判例がまだないため、契約書の特約事項等にはいろんなパターンで各社作成するんだろうなと思われます。
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