マンションの敷地権とは、マンションの「部屋(建物)」と「土地の権利」を一体化して扱うため、建物の登記簿に記載される土地に関する権利のことです。

敷地権には、土地を所有する「所有権」だけでなく、土地を借りる「借地権(地上権・賃借権)」が含まれるケースもあります。

  • 「マンションを買うと、土地も自分のものになるの?」
  • 「気になっている物件に敷地権の登記がないけれど、購入して大丈夫?」

中古マンションを探していると、このような疑問を持つことがあるかもしれません。特に築年数の古い物件で「敷地権の登記がない」と聞くと、「将来売却できるのか」「住宅ローンが組めるのか」と不安になる方も多いでしょう。

しかし、敷地権の登記がないことと、土地を利用する権利がないことはイコールではありません。 単に土地の権利が建物とは別に登記されているケースも多く存在します。

この記事では、マンションの敷地権の意味や所有権との違い、制度が始まった時期(1984年〜)や敷地権がない場合のデメリット、購入前の確認ポイントを初心者にも分かりやすく解説します。

なお、マンション購入時には権利関係だけでなく、立地や管理状態など総合的な視点での物件選びが不可欠です。マンション選びの全体像や注意点について詳しく知りたい方は、「マンション選びのポイント」も合わせてご確認ください。

マンションの敷地権とは?部屋と土地の権利の関係

マンションを購入すると持ち分はどうなる?

マンションを購入すると、購入者は「自分が住む部屋(専有部分)」を所有すると同時に、「建物が建っている土地」についても一定の権利を持つことになります。

  • 専有部分(部屋): 部屋の内脈など、購入者が単独で所有・管理する部分。
  • 共用部分: エントランスやエレベーター、廊下など、他の所有者と共同で利用する部分。
  • 敷地の権利: 一戸建てのように1人で土地全体を所有するのではなく、全所有者で土地の権利を分け合います(持分)。

部屋を所有するために必要な「敷地利用権」

マンションの部屋を所有・使用するためには、ベースとなる土地を利用する権利が必要です。これを「敷地利用権」と呼びます。

敷地利用権には主に次の3種類があります。

土地に関する権利概要特徴
土地の所有権マンションの所有者全員で土地の所有権を分け合う最も一般的。毎月の地代は発生しない
地上権建物を所有するため、地主の土地を使う権利原則として、譲渡にあたり地主の承諾を必要としない。ただし、個別の契約内容も確認する
賃借権土地の所有者と契約を結び、土地を借りる権利譲渡には原則として地主の承諾が必要。契約で承諾の取扱いが定められている場合もある

「分譲マンション=必ず土地も所有している」とは限らないため、購入前には土地の権利の種類を確認することが非常に重要です。

「敷地利用権」と「敷地権」の違い

似た言葉ですが、不動産登記上の扱いが異なります。

  • 敷地利用権: マンションの部屋を所有するための、土地に関する権利全般(概念上の権利)。土地に関する権利が所有権・地上権・賃借権と分かれている。
  • 敷地権: 敷地利用権のうち、登記され、「マンションの部屋と土地を分離して処分できない土地の権利。

敷地権があるマンションでは、原則として、部屋を売却すると、それに対応する土地の権利も一緒に買主へ移ります。
ただし、土地を借りているマンションでは、売却時に地主の承諾が必要かどうかなど、契約条件も確認しましょう。

敷地権の割合とは?

登記事項証明書(登記簿)に記載される「敷地権の割合」とは、その部屋の所有者が土地全体に対して持っている権利の割合を示したものです。

例えば、土地の所有権が敷地権になっていて、「敷地権の割合」が100,000分の1,200と記載されている場合は、土地全体について1.2%の所有権の持分を持っていることを表します。

一方、土地を借りる権利が敷地権になっている場合は、その借りる権利についての割合を表します。

いずれの場合も、「敷地の特定の場所を、自分だけで自由に使える」という意味ではありません。

マンションの敷地権と所有権の違いとは?

「所有権」は権利の種類、「敷地権」は一体化された状態

敷地権と所有権は、対立する概念ではありません。

  • 所有権: 「土地や建物を自由に所有できる」という権利の種類。
  • 敷地権: 建物と土地の権利が一体化されて登記されている状態。

登記事項証明書に「敷地権の種類:所有権」と記載されている場合は、「土地の所有権が、部屋と一体化されて敷地権になっている」ことを意味します。

確認する言葉表していること
所有権土地や建物を所有する「権利の種類」
敷地利用権マンションの部屋を所有するために必要な「土地の権利(総称)」
敷地権敷地利用権が登記され、「部屋と切り離して売買できない状態」

敷地権が「所有権」の場合と「借地権」の場合の違い

敷地権が「所有権」か「借地権(賃借権・地上権)」かによって、購入後のコストや条件が異なります。

敷地権の内容土地との関係主な確認ポイント
所有権土地の所有権を全所有者で共有する対象となる土地の筆数、持分割合
借地権(地上権・賃借権)他人の土地を借りて建物を所有する借地期間、毎月の地代、更新料、解体更地渡しの有無

借地権付きマンションは物件価格が抑えられる傾向がありますが、毎月の「地代」や「解体準備積立金」が必要になるケースがあるため、総合的な予算計画が大切です。

マンションの敷地権はいつから?1984年より前の物件はどうなる?

敷地権の登記制度は「1984年(昭和59年)1月1日」からスタート

マンションの敷地権登記制度は、1984年(昭和59年)1月1日の改正不動産登記法の施行によって始まりました。

制度発足前に建築・分譲された古いマンションでは、建物と土地の権利が一体化されず、建物と土地が別々に登記されている物件(敷地権化されていない物件)が存在します。

例えば、部屋の登記は建物の登記簿に、土地の所有権の持分は土地の登記簿に記録されているケースです。

国土交通省の資料でも、敷地権の登記が始まる以前に供給された団地では、建物の所有者と土地の共有者が異なる場合があるため、注意が必要とされています。

※参考:国土交通省「団地型マンションのための敷地分割ガイドライン」

1984年より前の物件でも敷地権化されている場合がある

1984年より前に建てられたマンションでも、その後、必要な手続きを行い、敷地権の登記がされている物件があります。

逆に、1984年以降の物件であっても、土地の権利関係が複雑などの理由で敷地権化されていないケースもあります。築年数だけで判断せず、現在の登記事項証明書の内容をしっかり確認することが重要です。

「敷地権がないマンション」の2つのパターン

「敷地権がない(敷地権なし)」と表記されている場合、以下の2つのパターンのどちらに該当するかを切り分けて考える必要があります。

パターン①:敷地権の登記はないが、土地の権利自体はある(分離登記)

古いマンションに多いケースです。建物とは別に「土地の共有持分登記」がなされており、売主が部屋の所有権と土地の共有持分を両方持っている状態です。

このように、敷地権の登記がなくても、売主が土地の権利を別に持っている場合があります。

建物と土地の権利が別々に登記されていることだけを理由に、問題のある物件とはいえません。ただし、売主が持つ土地の権利や、今回の売買に含まれる範囲を確認したうえで、購入を判断することが大切です。

パターン②:土地を利用する権利自体に不足や問題がある

売主が土地の持分を持っていなかったり、敷地の一部(複数の土地に分かれているうちの1筆など)について権利関係が不明確だったりするケースです。

このような物件は、将来のトラブルや再建築時の問題、住宅ローン審査不適合になるリスクが高いため、慎重な調査と専門家(不動産会社、司法書士、弁護士など)への確認が必要です。

敷地権の登記がないマンションのデメリット・注意点

敷地権の登記がない物件は、直ちに「買ってはいけない物件」とは限りませんが、以下の4つの注意点・デメリットがあります。

① 建物と土地の権利を別々に調査・登記する必要がある

敷地権が登記されている場合は、建物の登記事項証明書から、敷地権の種類や割合などを確認できます。

一方、敷地権の登記がない場合は、土地の権利が建物とは別に登記されていることがあるため、土地の登記事項証明書も確認し、売主がどのような権利を持っているか調べる必要があります。

なお、敷地権の登記がある場合も、土地の権利関係について必要な調査を省けるわけではありません。

② 土地が複数(複数筆)あると確認が非常に複雑になる

マンションの敷地が「3筆(3つの区画)」などに分かれている場合、それぞれの土地について売主の持分が正しく設定されているかを確認する必要があります。一部の土地の登記漏れがあると、将来的なトラブルの原因になります。

③ 売買や相続時の手続き漏れリスク(相続登記義務化の注意点)

過去の所有者が変わる際、建物の移転登記だけを行って「土地の移転登記を忘れていた」という事故が稀に起こります。
特に2024年4月からは「相続登記の義務化」も始まっており、土地の登記名義が過去の権利者のまま放置されていると、解消までに多くの時間と費用がかかるリスクがあります。

④ 住宅ローン審査や将来の売却に影響する可能性がある

金融機関によっては、敷地権化されていない物件に対して担保評価を低く見積もったり、追加資料の提出を求めたリする場合があります。同様に、将来売却する際も買主への説明が複雑になるため、売却期間が長引く可能性があります。

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購入前に確認したい資料と不動産会社への質問

確認すべき重要書類一覧

資料名主な確認ポイント
建物の登記事項証明書部屋の所有者名義、敷地権の表示(種類・割合)の有無
土地の登記事項証明書土地の所有者や担保などの権利関係。敷地権の登記がない場合は、売主の土地に関する権利も確認する
重要事項説明書敷地に関する権利の種類、管理規約、取引条件
売買契約書売買対象に含まれる建物および土地の権利範囲
借地契約書(借地の場合)借地期間、地代、更新条件、譲渡承諾の要否

不動産会社に聞くべき5つの質問

気になる中古マンションに敷地権の記載がない場合は、以下の質問を担当者に投げかけてみましょう。

  1. 「売主様は、この部屋に対応する土地の権利(所有権持分など)を確実に持っていますか?」
  2. 「今回の売買対象には、必要な土地の権利がすべて含まれていますか?」
  3. 「この物件の敷地権登記がない理由は何ですか?」
  4. 「建物と土地の名義や持分に不一致がある場合、引き渡しまでにどのような登記手続きを行いますか?」
  5. 「この権利関係の状態で、住宅ローンを利用するうえで確認しておくことべきはありますか?」

口頭での「問題ありません」という回答だけで納得せず、登記事項証明書などの公的資料を示しながら説明してもらうことが大切です。

まとめ|敷地権の有無だけでなく「全体のバランス」で判断しよう

マンションの敷地権とは、部屋を所有するための土地に関する権利のうち、登記され、部屋と切り離して処分できないものです。

  • 敷地権の登記がある: 部屋と土地がセットで扱われており、確認がシンプル。
  • 敷地権の登記がない: 土地の権利が別に登記されていることがあります。売主の権利と売買対象を確認したうえで、購入を検討します。

「敷地権がないから危険」と即座に排除するのではなく、「売主が正しい土地の権利を有しているか」「住宅ローンや将来の売却に支障がないか」を個別具体的に確認することが重要です。

また、マンション購入において敷地権などの権利関係は非常に重要な要素ですが、成功させるためには「立地」「管理状態」「耐震性」「修繕積立金の適正さ」といった全体の総合評価が欠かせません。

失敗しないマンション選びの全手順やチェックリストについては、「マンションの選び方」で詳しく解説しています。ぜひ合わせてご一読ください。

検討中のマンションの権利関係や選び方に不安がある方へ

  • 「敷地権なしと書かれていて購入していいか迷っている」
  • 「登記簿の見方が難しく、不動産会社の説明に不安がある」

そのような場合は、売買契約を締結する前に、客観的な第三者の視点で確認することをおすすめします。k

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