土砂災害リスクと違法物件
「検査済証取得している物件だから問題ないです!!」
そんな不動産屋のセールストークを鵜吞みにしても大丈夫でしょうか?
昨今、災害リスクを考慮した物件選びが重要視されておりますので
今回は、建物自体の検査済証取得の可否と土砂災害リスクは別物であるという事を見てきた事例でお伝えしたいと思います。
検査済証を取得していても違法に建築されている物件は、いまだ新築物件でもあります。
写真の物件は、実は検査済証も取得している建物です。
建物自体は遵法性がある建物なんですが、対象地は土砂災害危険区域に存する物件です。
土砂災害危険区域に指定されている土地で建築物の建築条件等がクリアされていないのに建物検査済証が取得されてしまっているんです。。。
そんなカラクリ知りたくないですか?
こんにちは。
台東区上野で不動産問題解決コンサルティング仲介の
株式会社ユー不動産コンサルタント脇保雄麻です。
今回は、土砂災害被害のニュースを見てダメ物件をつかまされないためにも参考として記事を書きましたので是非参考にしてみてください。
検査済証とは
そもそも検査済証って?
検査済証とは、建築基準法上適法に建物が建築されているか建物完成後に完了検査を受けて取得する書類の事です。
基本的に検査済証があるという事は、建物完成した後の完了検査を受けているという事になります。
宅地に対してどういった建築物を建てるか予定建築物の申請書をして
工事途中で中間検査というものを行って建物工事が完成後に建物完了検査という流れで検査済証が取得できるまでの基本的な流れとなります。
私が執筆した書籍「不動産のしくみと新常識」p108に
基本的な流れと台帳記載事項証明書での基本的なチェックポイントを載せております。
新築物件で調査したらヤバイと分かった
こちらの事例は約3年くらい前だと思うのですが、
どう考えても危険な物件だなあと思い調査したら違法だとわかった物件です。
この物件の敷地は、高さ約10m超の場所にある広大な土地での雑種地でした。土砂災害危険区域指定された場所で宅地開発された宅地となっておりました。
宅地開発されて新築10戸くらいの住宅販売地となったわけですが、
その後に更に残地部分に数年後に新築された物件でした。
高さ約10mの山の際に建物が建っている感じです。
土留め擁壁や間知ブロック等が何もありませんが、行政の方では数十年前に対策済という事でした。
写真をよく見ると縦にU字溝みたいなものが設置されていて雨対策という事だと思います。
普通に見てもやばそうだなあと思うと思うのですが、
急傾斜地に対しては行政で対策済で
建物は検査済まで取得している物件です。
「日当たり良好でリビングからの眺望はサイコーです!」
そんなセールストークから購入してしまったのですかね。。。。
実は、
行政の方で対策済というのは、急傾斜地自体に対して土砂災害対策としているのですが
急傾斜地での建物建築に関しては条件等があったのですが、それがクリアしていませんでした。
違法に検査済証が取得できてしまう!?
崖の上の敷地は、もともと何も無い雑種地でした。
そこから宅地開発で道路を入れて10世帯位の分譲地としたのですが、
崖上の際に建っている建物も宅地開発する際に建築予定物件として申請していたら恐らく開発許可が下りなかったのではないかと思います。
この違法物件が出来上がってしまった流れとしては、
1:土砂災害危険区域指定されているが行政で対策済
2:開発許可申請時は、崖上の際から建物分譲予定地との距離をとって申請
3:開発許可後に分譲地として10世帯分譲
4:開発分譲後、崖の際上の残予地に更に建物建築
簡単な流れとしては上記の時系列で建物が建てられたのですが、
そおそも4の開発分譲後に更に建物建てることできたのか?という事が疑問だと思うのですが。。。
簡単に説明すると
土砂災害危険区域の指定は都道府県になります。
開発許可と建築確認は市区町村になります。
(民間での建築確認機関もありますが)
市区町村でも更に分けると
開発許可は、開発指導課(市区町村によって部署名は違います)
建築確認は、建築審査課
審査箇所も違うし行政側も違うという事です。
申請書類は、いまだ紙ベースです。
要するに担当する行政機関によってどういた申請が上がっているかが時系列で分かるわけではないという事です。
開発登録簿と土地利用計画図を参照
開発登録簿や土地利用計画図等で確認すると
崖際の敷地は、更地となっており建築物等の申請はなされておりませんでした。
開発許可で出来た道路に4m接するように残余地を残して申請されており、さらにその道路接してある部分は図面上ではフェンスで囲ってありました。
(そこには建物建てないという開発申請する際のアピール?)
ただ、もちろん現況はフェンスは設置無しです。
開発許可については、「不動産のしくみと新常識」p110
開発許可後に分譲。さらに数年後に崖際に建築確認申請を上げているのですが、
開発許可での道路は建築基準法42条1項2号道路の扱いとなります。
建築基準法上の道路に2m以上接していれば基本的に建物建築することが出来ます。
ただ、
土砂災害指定区域に指定している場所ですので、建築するには指定区域に指定した都道府県での申請と確認が必要です。
都道府県の県土事務所において当時の申請内容は閲覧することが出来ました。
建築できる条件としては、崖際から2m以上離しさらにRC造での土留め擁壁を設置する条件となって申請図面等に記載ありました。
実際に建てられた建物と土留めの様子です。
明らかにRC造の土留めではありませんし、崖際から1mも離れておりませんでした。
H鋼を埋め込んで石板を差し込んで土留めしております。
なぜ完了検査が通ってしまう!?
実際に都道府県に出している宅地の申請図の内容と
市区町村に出している建築確認申請時の宅地の図面の内容が違っておりました。
土砂災害危険区域に指定した都道府県側は、建物が完成された後の検査などは一切しません。
建物確認申請の宅地図面をみると土砂災害危険区域に対して対策済みとしか記載ありません。市区町村での担当者も都道府県でのどういった申請書類が提出されたかまではわからないのです。
市区町村の建築完了検査での担当部署に
都道府県での宅地申請図面と確認検査での申請図面が違う事を指摘したら
「ウチは都道府県とは別で、建物自体の検査に対して審査しているだけ」と逃げられてしまいました。
それ以上深追いすることもなく結論的にはやばい物件という事でした。
私はジャーナリストでもないし誰が悪いとかの悪者探しをするつもりは一切ありません。
ただ、
住宅といういのは安い買い物ではないと思います。プロに相談できる環境でもって取引を進めた方が安心だと思います。
分譲会社と直接やり取りすれば仲介手数料等はかからないので安上がりだと思いますが、
安かろう悪かろうでダメ物件をつかまされてしまったら結局高くついてしまいますからね。
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